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WEB SNIPER Cinema Review!!
魔法と美しさを秘めた台北、愛と夢を求める人々の物語――
パリへ去った恋人フェイに会いたい――台北に残された青年カイは渡航費を稼ぐために謎の小包を運ぶ怪しい仕事を引き受けるが、そこに追跡者の影が……。親友のカオ、カイに恋する書店員スージーを巻き込みながら、一夜の不思議な冒険が始まる! ヴィム・ヴェンダース製作総指揮。エドワード・ヤンを師事した新世代の作家が台北を新たな視点で描いた意欲作!!

新宿武蔵野館他にて公開中
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あの『ヤンヤン 夏の想い出』『クーリンチェ少年殺人事件』のエドワード・ヤンに師事し、その才能に惚れ込んだヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を買って出たという新人監督が台湾から登場!とくれば心配なのは上映時間だが(なにしろ『ヤンヤン 夏の想い出』は3時間、『クーリンチェ少年殺人事件』にいたっては4時間!ヴィム・ヴェンダースといえば観る者を眠りに誘う超ロングショットで3時間を越える『さすらい』がある)もしかして両監督の想いを足して7時間くらいの超大作なのでは……と思いきや、上映時間は85分。ヴェンダースというよりむしろウディ・アレンがプロデュースしたかのような、テンポよくシーンが切り替わって進む、軽快な、そして驚くほど上品な映画だった。

舞台は台北。レコードに針を載せる音と共に始まる本作は、ギターのカッティングとバイオリンのストリングスにのって、犯罪さえも軽快にほんわかと進んでいく。台北というのは行ったことないが、東京みたいだなと思う。東京の町の中に中国の屋台がある、それが台北だろうか?

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ストーリーは、主人公カイの恋人がパリに留学に行ってしまう所から始まる。ある日ついに国際電話で別れを告げられてしまったカイは、いてもたってもいられなくなり、フランス行きを決意。日頃から「困った時は俺を頼れ」と言っていた怪しい不動産屋、パオに相談する。快く旅費をカンパしてくれるパオだったが、一つ条件があると言う。それはある包みを運んで欲しいというものだった。
そこから翌朝にパリ行きを控え、ギャング団、刑事のコンビ、カイに密かに想いを寄せる女の子などが、包みを巡って右往左往する一晩の物語が始まる。

本作には、エドワード・ヤン作品で観ていた顔がいくつか出ていて、中でももう1人の主人公とも言えるギャングのリーダーは『クーリンチェ〜』『カップルズ』に出ていた、クー・ユールンだ。このリーダーがまたいい味出していて、いつも無表情なとぼけた顔のまま、嘘ばっかついて、隙あらば人を出し抜こうとしては失敗している。「俺に落とせない女はいない」とか言っていつも革ジャンを着ている刑事といい、なにしろこの映画に出て来る男はバカばっかなのが素晴らしい。

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登場人物のキャラの立ち方はなんとも日本映画っぽくて「お、これは日本だったら岸部一徳……」という感じで、新しい人が出て来るたびに誰かしらを連想してしまう。中でもカイに密かに想いを寄せてる書店員(アンバー・クオ)、これは絶対蒼井優ちゃんを意識してるだろう!と言うと、アンバー・クオファンに怒られるだろうか。
ただ監督がこの映画を撮る時に意識していたのは、ヌーベルヴァーグだそうで、確かに本作には、恋、犯罪、ダンス、とヌーヴェルヴァーグ的要素の全てが揃っている。同時にこの映画が独特なのは、全編に善良さが漂っているところ、その上品さだ。これは『ヤンヤン 夏の想い出』を観て映画の道を志したアーヴィン・チェン監督の品のよさから来ているのか、それとも台北がそうさせているのか……。
この善良さは最後、なんとも奇妙な中年ダンス(台湾では公園で太極拳よろしく中年の男女がラインダンスみたいのを踊ってる)で劇中の現実を越えて全体を包み込む。映画の歴史に立ち返るようなこのシーンは、古き良きアメリカ映画(たとえばMGMミュージカル)の後にやって来た、フランス映画(ヌーヴェルバーグ)の後にやって来た、00年代の数々の名作(たとえばフランソワ・オゾン)を踏まえた監督の演出的冒険だ。このシーンでこの映画はただ上品なだけじゃない、素晴らしいものになっている。台湾に対する愛にも裏打ちされていて「ああいいもん観たなあ!」と心底感動するし、それからその直前の女の子への演出なんかもかなりグッと来た。

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ところであの、怪しいおっさんの不動産屋の看板に書いてあった「真心、用心、真用心」というキャッチコピーは何なのだろう。意味が微妙に不明な上にテンポがよくて頭から離れない。台湾では実際よくあるコピーなのか、いつか台湾に行った時に同じ文句を見つけたらかなり興奮しそうだ。と、いつのまにか主人公と同じように、こちらの中にも台北という街が入り込んでいる。それこそが監督の狙いだそうで、街への愛、それこそがヌーヴェルヴァーグの本質だったのだ。

文=ターHELL穴トミヤ

『台北の朝、僕は恋をする』
新宿武蔵野館他にて公開中
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監督・脚本= アーヴィン・チェン
製作総指揮= ヴィム・ヴェンダース / メイリーン・チュウ
撮影監督= マイケル・フィモナリ
出演= ジャック・ヤオ、アンバー・クォ、ジョセフ・チャン、トニー・ヤン、クー・ユールン、カオ・リンフェン、ポール・チャン

配給=アミューズソフト ショウゲート



2009|台湾・アメリカ|1:1.85 ビスタサイズ|85分|北京語・台湾語|ドルビー5.1

関連リンク

映画『台北の朝、僕は恋をする』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊 ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。 http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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04.10更新 | WEBスナイパー  >  レビュー
文=ターHELL穴トミヤ |

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