文=横田猛雄
絵=伊集院貴子
第一課 逆性石鹸は絶対不可
お尻派の同志諸君、先講までのお勉強で諸君は、身の廻りに立派な浣腸器が沢山あることが分かった訳ですから、それを使って、さっそくケッツの穴に注入してみようと血が騒ぐのは、これは人情として当然のことですが、皆さん、ここで一つ、厳重注意事項がありますのでよく聞いて下さい。
それは注入する液についてです。
入れては危険なものが身の廻りにあるのです。
平成五年十一月二十四日(水曜)の産経新聞朝刊の社会面に左のような記事がありました。
「国立奈良病院で医療ミスし入院女性死亡、消毒液を体内注入――と言う事件で、産婦人科に入院中の五十一歳の主婦が、今年八月十六日、手術前に行なう浣腸液の投与に、看護婦が五百ccの高圧浣腸を始めたところ、約百ccを注入した時点で、主婦が異常を訴えたため、投与を中止したが、その主婦は直後から嘔叶を操り返す一方、急性腎不全にかかり、尿が出なくなるなど、容態が急変し、不審に思った主冶医らが翌日、使用済みの薬瓶を調べたら、「逆性石鹸」が余分に使われていることから、看護婦が浣腸液と間違えて、それを投与したことが判ったということです。
逆性石鹸というのは、皮膚・粘膜用の消毒液です。
同病院には腎不全治療の施設が無いため、二日後の十八日に、他の病院に移して集中治療をしたが回復せず、十一月十六日に、とうとう腎臓などの急性薬物中毒による多臓器不全で息を引きとったというものです。
この記事を読んで思い出したのは、昭和三十年代中半の『奇譚クラブ』の、読者からの投稿記事の中にも、某地方の医院に虫垂炎で入院した女子高校生が、手術前の浣腸に、これも看護婦の間違いから、農薬を注入され、串著は急に苦しみだし、ついに死亡したという事例の報告があったことです。
その記事には農藁とあり、それだけではその医院の薬品の管理の朴撰さにあきれ、一寸常識では信じられないように思いましたが、地方の町医の場合、自宅と診療場所が同じであることが多く、当時はよく殺虫剤(例の第六講のアース)や除草剤などが、自治会や婦人会から各戸に配られたりして、よく似た容器に入った、中味のよく似た品が、狭い勝手口に置かれたりして、看護婦さんの慣れからくる不注意で、間違われることになったのでは?と思いました。
グリセリンの透明でネットリとした感じは、本当に当時の殺虫剤アースとよく似ていました(但しアースは臭いが強かったが......)。
又、除争剤や防虫剤には、乳白色をした、石鹸浣腸液と同じような感じのものもありました。
第二課 洗顔用石鹸
諸君、先の二事件の例が示すように、ケッツの穴から絶対に入れてはいけないものがあるということを、よく頭に入れておいて下さい。
目から入れて大丈夫な物でも、ケッツから入れると危険な物もあるのです。
昔から、医療用の浣腸には、グリセリンの水浴液やドナン(武田薬品の製品、現在では製造していない)や、石鹸液などが使われてきましたが、この中で諸君が誤解しやすいのがこの石鹸の水溶液です。
昔の『奇譚クラブ』には、医院での高圧浣腸の場面で、浣腸の準備として看護婦さんが・粉石鹸を水に溶くシーンがよく出てきましたし、浣腸好きのマニアの間でも、人手しやすいので石鹸浣腸は最も多く愛用されたものですが、これらは洗面・洗顔用の普通の石鹸を用いたものであり、決して右の事件のような逆性石鹸(薬用・消毒用石鹸水)を使用したものではありません。
諸君が使用するのなら、普通の洗顔石鹸を、ごく薄く温水に溶いた物を用いるようにして下さい(それもなるべく香料など、余計なものの入らない、あの安い民宿にある黄色いレモンの型をした唯の石鹸分だけの単純なのが一番いいのです)。
絶対に逆性石鹸(消毒用)などは使ってはなりません。
(続く)
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