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▼ 『ザ・エディット/エディット・ミュージック・ディスク・ガイド(株式会社ブルース・インターアクションズ)』 著者=エディット・カンファレンス
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『ザ・エディット/エディット・ミュージック・ディスク・ガイド』(株式会社ブルース・インターアクションズ)

著者=エディット・カンファレンス

レビュアー=ばるぼら

映画、文学、音楽、絵画、ファッションなど様々なカルチャーで用いられるアートフォーム「エディット」の詳細を音楽にフォーカスして紹介するガイド・ブック。時系列に沿ったエディットの歴史、150枚以上のレコード・ディスク・ガイド、オリジナル・エディターへのロング・インタビューを収録。


『ザ・エディット』は「エディット」と呼ばれる手法を用いた音楽のガイド本である。あまり表に登場しない話題のため想像しづらいところがあるが、既に録音され発表された楽曲を素材に、新たな楽曲を再構築する手法だ。いわゆる「リアレンジ/リミックス」と違うのは、マスターテープから振り分けた楽器パート別の音素材を扱うのではなく、一緒くたになった音源をもとにする点。発祥は70年代のディスコと言われ、ダンス・ミュージック一曲あたりの分数がもっと長ければいいのにと考えたDJが、テープを操作しイントロや間奏などをつなぎあわせて引き伸ばした「Extended Version(=ロング・バージョン)」を作り始めたことに由来する(12インチ・シングルの発祥でもある)。この本はエディットの全盛期である80年代のダンス・ミュージックを中心に、テープ操作という手法から過去に遡って現代音楽のミュジーク・コンクレートや、昨今のニコニコ動画やMADまでを取り上げている。ほとんどのリスナーにとって馴染みのないカテゴライズのため、その歴史、および紹介されているディスクは新鮮な驚きをもたらすはずだ。

本の冒頭で触れられているとおり、「エディット」を取り上げたガイドはこの本が初ではない。海外『Big Daddy Magazine』の2003年の特集「History of Cut'n'Paste」が元ネタである。この特集の影響で、日本では『collider』2号が同様の特集を組み(『Big〜』誌の翻訳も載った)、また『spectator』誌でA.K.I.氏がエディットのディスク紹介を行なうなど、局地的な注目は集めていた。そして、それらの記憶が忘却された 2009年末に、突如一冊にまとめられたのが『ザ・エディット』、という流れのはずである。

この本で得られる情報自体は非常に満足度が高かったが、しかし反面、本の構成には再考の余地があると思う。エディットの黄金時代と定義されている 80年代の話題が異様に多いのだ。始まりにこだわりすぎるあまり、同じ話(ラテン・ラスカルズ他の影響など)が何度もくり返され、歴史全体を見通すには少しバランスが悪い。80年代までとそれ以降(ポスト・エディットと称されている)が分断しているとして、本文中に「エディットを聴かれるきっかけになればいいですよね」とあるように、もし本当に今のリスナーに届けたいなら、最後の章のニコニコ動画周辺の音楽にもっとページを割かれているべきだろうし(ノンセクトラジカルズのインタビューから十分繋げられるはず)、逆に80年代をやりたいならそこだけを徹底的にやればいいと思う。つまり書名と内容にズレが生じているように感じた。このタイトルでやってほしかったのは「エディット=二次創作音楽」と割り切った定義による全方位的音楽ガイドである。ターンテーブルの上であらゆる音楽が平等だとすれば。

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『ザ・エディット/エディット・ミュージック・ディスク・ガイド(株式会社ブルース・インターアクションズ)』
著者=エディット・カンファレンス
発売:2010年1月10日
定価:798円
ISBN-10:4797357169
発行元:株式会社ブルース・インターアクションズ

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