文=アニエス・ジアール
在仏カウンターカルチャー専門ジャーナリスト、アニエス・ジアール&フランシス・ドゥドブラー。親日家でもあるお2人が、世界のフェティッシュ事情をお届けします。2008年秋から年末にかけてスペインで行なわれた、日本のフェティッシュ・アートを扱った展覧会「ファンタジア・エロチカ・ジャポン Fantasia erotica japonesa」。このアニエスが企画した展覧会の模様をご紹介します。
西洋人は日本のエロティシズムに魅了される。もっと正確に言えば、西洋人は日本の性的タブーのなさに魅了されるのだ。
2008年10月9日木曜日、スペインでの私の(主催した)展覧会のヴェル二サージュ(一般公開前の特別内覧会)で、私はそのことを確信した。その展覧会は「ファンタジア・エロチカ・ジャポン」と題されたたものだった。展覧会は2008年12月11日までバルセロナのアートギャラリー「Artz21」で開かれていた。
私が展示のコミッショナー(企画者)になるのは初めてで、それが一部の友人を選んだ理由だった。渡邊安治、常盤響、西牧徹、林アサコ、Bee KANNO、水野純子、田亀源五郎、インベカヲリ★、市場大介、吉田嘉名……。残念なことに、ギャラリー「Artz21」では、私が大好きな他の日本のアーティストは展示できなかった。この展覧会には日本のアーティストが全部で10人、他に2人のフランスのアーティスト(ヨニラボ、ジャック・リスト)、 1人のスイス人(エマニュエル・モッツ)と1人のベルギー人(ヴィクター・サンチェス)がいた。
作品は全て興味を引いていたたけれど、特に日本人の作品が注目を集めていた。雰囲気は非常によかった。オープン前の時間にギャラリーは観客でいっぱいになった。フランシスは、すべての写真を撮っていた。
それから、私はこの展示の目的を説明する講演会を開いた。椅子が足りない程の盛況ぶり。聴衆は最初は(ただ説明を)聞いていた。終わりの方に誰かが尋ねた。
「西洋のエロティシズムと日本のエロティシズムの大きな違いは、何ですか?」
私はこう答えた。
「西側諸国のタブーは、宗教が起源です。キリスト教の影響を受けて、裸と性への関心は、罪になったのです。そう、西洋のポルノ映画の中が下卑たセックスを描いている理由は、そこにあります。日本では、セックスは神聖視されています。いいえ、セックスだけならタブー視されるものの、神道に鼓舞されるのです。人は、豊かさの聖域で、男根と女性器の前に祈ります。セックスは、日本では捧げ物なのです。人間はセックスを通して神の豊穣の営みに参加するのを許されます。セックスは、男を神と等しいものにするのです。セックスは、強さ、喜び、エネルギーそして力を与えます。ここに、我々西洋人が日本に特別な興味を持つ理由があるのです。日本が我々に幸せになる可能性を示してくれるのです」
熱狂的な拍手だった。
残念なことに、パーティは良くない終わり方だった……。フランシスは、すべての記録が詰まった2台のカメラと鞄を盗まれてしまった。
スペインは、ヨーロッパで飛び抜けて盗難が多い国。警察は、1日に3,000人を検挙している。現に、スペインでは1日当たり30,000件の盗難がある。
写真が要領を得ていない理由はそういうこと。私の(森美樹にもらった)ニコンで、ギャラリーがクローズした後に撮ったものしか残っていない。
最初は泣きそうだったけれど、最も幸せな瞬間には、ちょっとした不幸せが紛れ込んでいるもの。それが人生、でしょう?
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