2009.11.16 Mon -11.28 Sat
at vanilla gallery
11月16日(月)〜11月28日(土)
東京・銀座「ヴァニラ画廊」にて開催!
文=ヴァニラ画廊
“紙"をおおもとの素材とする張り子の持つ性格こそ、作者の作品の基軸となっているものである。幼少のころから紙と親しみ、ある意味その「脆弱さ」に惹かれ続けてきた作者は、いつか紙から離れられないということに気がついた。そうして今もなお、張り子技法を用いて立体を作り続けている。
張り子の作品を制作する中で、作者はあるふたつの表現を模索し続けてきた。ひとつは江戸文化における妖怪変化を立体としてあらわすことであり、これは1998年、講談社文庫『姑獲鳥の夏』(著者:京極夏彦)の表紙となったことを契機に、「化けものつづら」としてシリーズ化され発表する機会を得た。
そしてそれと並行して行なってきたのが今回の「MELTDOWN」という作品群である。
中学時代に見た、鈍く不気味な青い光を受けて浮かび上がる、冷却水に浸った炉心部の写真ーチェレンコフ光と呼ばれるそれは、まるで自分をとりまくあらゆる事象の“負"の部分を代表しているかのような印象を抱かせるものであった。
「MELTDOWN」の根底に横たわる感情とその作品群の傾向は、すべてこの一枚の写真から出発している。これらは発生の時期が「化けものつづら」とほぼ同じであるにもかかわらず、その造形の発想が作者の感覚的なものに拠るところが強いため、実際に具体化されるまでにはかなりの時間が費やされている。また意匠的・様式的な部分をできるだけ排除し、空間の構成以外はほとんど無意識な作業に頼るなどプロセスを必要としないきわめて感覚的な発露という点で、「MELTDOWN」は「化けものつづら」に対する自己葛藤の表象であるともいえるだろう。
“感情"という点以外にほとんど秩序だった骨格を持たない、実験的ともいえる「MELTDOWN」のシリーズは、「化けものつづら」とは対極にある振幅として、今も安定を保つ振り子のような役割を果たしている。
上へ |
カテゴリ一覧へ TOPへ |
■広告出稿お問い合わせ ■広告に関するお問合せ ■ご意見・ご要望 ■プライバシーポリシー ■大洋グループ公式携帯サイト |