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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

金蹴りに魅せられた「玉男」さんの巻 第1回
08.06 14:30更新

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取材・文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回のゲスト「玉男」さんは、女性に股間を蹴り上げられることにこの上ない悦びを感じるM男性。気絶する一歩手前の痛み、男性なら誰でも経験しているであろうあの鈍痛を、自らの快楽に昇華させている氏に、「金蹴り」の肝を伺った。

★楽しそうに金蹴りしてもらいたい

本誌編集長が六本木のSMパブ「六本木Jail」に取材の打ち合わせで行った時のこと。そこに股間を蹴られている男がいた。さっそく編集長はスカウトし、今号(註1)の撮影とインタビューに登場願うことになった。

彼の名前は「玉男」さん。年齢は40代。なにより金蹴りが好きなんである。

「ほかのことも嫌いではないですよ。ただ、飛び抜けて金蹴りが好きなんです。SMクラブでも女王様によく言われるんですけど、もしかすると僕はMじゃないのかもしれない。蹴られたり、叩かれたり、握られたり、キンタマだけにこだわりが強い。SMは精神的なものだってよく言いますよね。それも理解はできるんですけど、僕が求めているのは精神性ではなくて、女王様と下僕のような関係にはなりにくいんです」

支配・被支配の関係があって初めて金蹴りが快楽となるのでも、金蹴りを導入としてより深い信頼関係を求めるのでもなく、彼の場合はキンタマを蹴られる瞬間だけで十全な関係が成立し得る。

もちろん男に蹴られても嬉しくはないが、相手の女性が自分の好みであり、蹴り方がうまければそれで不足はない。

「特にクラブだと、お金を払って一定の時間内でやらなければならないので、ほかのことをやっているのがもったいない。ムチは苦手ですし。だから、すぐに蹴ってもらって、ずっと蹴り続けてもらう方がいいんです」

――ということは、蹴ってくれる女性がいれば、SMクラブである必要はなく、SMという枠組みである必要さえないわけだ。

「そうですね。ただ、SMクラブしかやってくれる場所がなかったんです。今は『六本木Jail』のような店がありますけどね。ああいう場所はいいですよ、いろんな女の人が蹴ってくれるじゃないですか。素人の女性も来ていて、『私も蹴っていいですか』って言ってくれると嬉しいです。自分のことを理解してくれるのが嬉しいし、相手も楽しんでくれるのが嬉しい。怖い顔して蹴るよりも、楽しそうに蹴ってくれた方がいいんです。僕は女王様っぽいスタイルとか、あまり好きじゃないんですよ。ヒールはいて、レザーの服を着て、強そうな女の人よりも、どちらかというと、そういうことをしそうにない普通の人がOLみたいな格好をして、やってくれた方がいい」

――今だったら、イメクラみたいなところでも蹴ってくれる子がいると思うけど、それでもいい?

「いいですよ。そうですね、考えたことがなかったですけど、そういう場所もあるんですね。でも、僕が実践しようと思い始めた頃は、まだイメクラなんてなかったですから」

註1:2003年7月発売の「スナイパーEVE」vol.9のこと。この号にはインタビューの他に玉男さん出演のプレイグラビアも掲載された。

第2回に続く(「スナイパーEVE」vol.9より再録/2003年5月頃取材)





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