文=遠藤遊佐
人間が100人いれば100人分の性欲がある。あの家にも、あの部屋にも、あの店にも、とにかくヤリたくて仕方がない老若男女がひしめきあっている。
ヘンリー塚本監督の作品を観ると、いつもそんなことを感じてしまいます。
よく描かれるテーマは、不倫に変態に欲求不満に近親相姦。出てくる男は肉体労働者にギラついた中高年が多く、女は今どきシミーズ着て毛玉のついたような色気のない普段着パンティ着用。
要は“接合部がくっきり見えてナンボ”“かわいこちゃんの過激プレイを見られてナンボ”という今のAVの主流とはまったく逆の、リアルで泥臭いエロドラマなんですよね。なのに、どうしようもなくいやらしい。
なんだかんだ言っても、結局のところエロの源というのは“ヤリたくてヤリたくてたまらない”という、病にも似た激しい感情なんだと思い知らされます。
FAプロの作品がだいたいそうであるように、本作も3人の女の生々しい性欲を描いたオムニバス。
まず1本目は、怪しいバーで男を斡旋してもらうセクシーマゾの一夜を描いた“M女の我慢できない夜”。
店内にはカーテンで区切られたプレイスペースがあり、酒を飲んでいるすぐそばでマスターによってカップリングされた男女が声を殺してハメまくっている。そんなバーで“ヨン様似のS男”(花岡じった)を紹介された女。
礼儀正しく乾杯して見つめ合うと、すぐにSMホテルに直行してプレイが始まります。
ベチョネチョの濃厚ディープキスに、ビンタ。拘束椅子にくくりつけられたままでグイグイ犯され、女はバーでの澄まし顔からは想像のつかないようなうっとりした表情で感じまくります。
白くなめらかな脇の下には雄々しい腋毛が。
「名前は?」「M岡よ。あなたは?」「S島だ……」
なんてクサいセリフもたまりません。
2本目は、性豪だった夫に先立たれ、日々えげつない妄想とオナニーにふける未亡人熟女を描いた“未亡人のマスかきしまくり”。
「毎日毎晩ヤリまくったよね…。あんたのデカくてたくましいマラが恋しい…ああ、誰かとヤリたい。まんこがヤリたい…!!」
夫の遺影の前でそんなことをつぶやきながら繰り返すオナニーは、オナニーというよりまさに“マスかき”というのがふさわしいえげつなさ。電動バイブにまたがってガニ股で腰を振りまくり、正常位が恋しくなるとコタツの足に極太バイブをくくりつけ、仰向けで妄想オナニーに浸ります。
さらにマンションの隣の部屋にはドスケベなカップルが住んでいて、未亡人に見せつけるかのようにベランダで激しいセックスを繰り広げちゃったりするんですね。
彼氏の目を食い入るように見つめて「イカせて! イカせてっ!」と訴える女。それに中出しで応えるマッチョ男。もちろん2人がハメてることに気づいた未亡人はムラムラきて家に駆け込みオナニーにふけります。
そして最後は、男にオシッコを飲ませることで興奮するというヤリマン女子校生を描いた“18歳の万引変態痴女”。
おぼこい顔した清楚タイプの少女が、ノーパンでバスに乗り後部座席で中年男たちの公衆便所になったり、わざと万引きをして腹の出たオヤジをおびきよせ「私のオシッコ飲んだらヤラせてあげる」と迫ったり。
それだけでは飽きたらず、オヤジとセックスした後は飲尿好きの男の家をハシゴして、涼しい顔でもうひとハメ。うーん、ハードボイルド!
ここまでくるとむしろ清々しささえ感じます。
1話が30分程度。その中にドラマとカラミがバランスよく入っていて、飽きさせない演出はさすが。
FA作品では、毎回ラストに一列に並んだ出演者が手をつなぎ、音楽に合わせてフニフニ踊る“FAダンス”(遠藤命名。いわばカーテンコールみたいなもんですね)があるんですが、これも非常にいい味を出しております。
エロくて切なくて陳腐な“人間の性欲”をまるごと描いたヘンリー塚本作品。
本作ならずとも、一度は観ていただきたいところです。
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