文＝遠藤遊佐

夫からの依頼で貞淑なセレブ妻の身辺調査を行なう私立探偵・小沢。
週妻・沙織には、週数回ネットカフェに通う以外まったく後ろ暗いところがなかったが、不倫中の夫は彼女の浮気が見つかることを期待していた。
セックスレスの夫婦、夫の裏切り、それを知って涙する妻。
沙織がネットカフェに通うのは独りでSM動画を楽しむためだと知った小沢は、悲しみにくれる彼女と肉体関係を結んでしまう。そして白い体を縛り上げ、美熟女の中に潜むM願望をかなえるべく調教を開始する――。

登場人物は2人だけ。緊縛に鼻フック、蝋燭責め、浣腸などのハードプレイをマンツーマンで延々続けるというシンプルなつくりなのに、まるで映画のような独特のムードを感じられる作品であります。
私みたいにガチなSMファンじゃない人間でも、しっかり感情移入できる。これはきっと、冒頭のドラマ部分が利いてるんでしょうね。
SMにはいかに世界観が大事かということを再認識させられるなあ。さすがアートビデオ。

ヒロインの生田沙織さんは、余貴美子にちょっと似た地に足のついた感じの美人。自分の中にM願望があるのに気づいているけれど、ネットカフェでエロ動画を観てオナニーすることしかできない常識ある人妻です。夫を裏切ることなんて考えてない。でも普通のセックスでは満足できないから、自然とセックスレスになっていってしまうというゆきづまりの状態。
そこに冴えない中年探偵が現われ、
「奥さん、あなた結婚してから旦那さん以外とセックスしてないんでしょう。知ってますよ、あなたがネットカフェで何をしていたか。そして何を望んでいるのか……」
と囁くわけです。

「私ならあなたを満足させられますよ。貞淑な仮面をはずして本当の顔を見せてください」

そう言って、鼻フックでヨダレだらけになった顔を鏡にうつして見せたり、白い肌がガチガチに固まるまで蝋燭責めにしたりする男。
女は蝋燭を見ると「イヤイヤ」とすすり泣くけれど、どことなく開放感を感じているようにも見える。

やがて調教は、宙吊り鞭打ちや浣腸プレイにまでエスカレート。ぶっといミルク浣腸を何本も注入され、ウンコまじりのミルクをピューピューと撒き散らしてM女としての本性を開花させていきます。
貞淑な奥様がM女になっていく姿はもちろんイイですが、個人的には冴えない探偵がハードS男に豹変するギャップも興奮しちゃいますね。

ラストは緊縛ファック。
「欲しいか？　何が欲しいんだ？」「おちんちんください……」
しっかり抱き合い、首を締められながらピストンされて感じまくる姿には、ちょっとした愛情さえ感じます。

もう若くない男女の、ねっとりとした性欲とロマンを感じられる一本。
ストーリーにはちょっとしたどんでん返しもあるので、ちゃんと最後まで観たほうがいいですよ。