文=安田理央
ヘンリー塚本監督の作品にはブレがなく、裏切られたことはありませんが、本作は特にその美学が冴え渡っています。
オムニバス構成で、「生理が近付くとレイプされたい異常性欲妻」「縛られ、吊るされて犯されたいM女」「義母は母にあらず 色気溢るる女なり」「行きずりの男とするゴムなし乱れ牡丹」の四話を収録。どれも素晴らしいのですが、特に第一話の「生理が近付くと…」にはやられました。
生理が近づくと、力づくで犯されたくなる性癖のある人妻。ベランダで、最近隣室に越してきた一人暮らしの中年男と目が合います。人妻の思いが通じたのか、男は部屋を訪れ「今、目でおれに合図したろ」と言って、襲いかかってきます。しかし、人妻はそこで抵抗するんですね。ここでただセックスしてしまったら、力づくで犯されたいという欲望が叶えられないから。
大越はるか演じるこの人妻が、マゾの癖に気が強いという設定で実にいいんですね。挑むような目で男を睨みつけ、犯されてもうめくような声を上げるばかり。願いがかなったからといって、アンアン声をあげちゃあ、台無しですからね。
そして終わった後、ポツリとつぶやくのですよ。
「たまんねぇ、この刺激。癖になりそう」
人妻は、その後も「合図」を送り、男に犯されます。
男が言います。
「あんた地獄に片足つっこんじまったね」
うへえ、かっこいい。なんというハードボイルドなタッチ。もうこの一話だけ膨らませて一本の映画にしてもらいたいくらいですよ。
緊迫感のある演出、大越はるかの表情、やるせないまでにリアルなセックス、どれをとっても最高です。
その他の三話も期待に応えてくれる佳作揃い。マゾの哀しみを見事に描いた第二話、義理の息子に犯された後の表情が見物の第三話、そして第四話。ゆきづりの労務者に声をかけられてホテルに行き、「おまんこいいか?」「おまんこいい」と繰り返し叫びながらの激しいセックスをして、終わった後に「産まれて初めてよ、おまんこなんて言ったの」と告白する人妻。
どの作品も、性の欲望に振り回されてしまう人間の悲哀をリアルに描き出しています。そして、そうした描写がちゃんとエロさに直結してるんですよね。AVに心理描写なんていらねぇ、なんて言う人には、これを見て反省していただきたいものです。
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