文=安田理央
電車の中で女を見つめる女。声を出さずに口の形だけで執拗に「おまんこ」と繰り返して来る。見つめられた女は、次第に引きこまれていき、電車を降りたその女へ付いて行ってしまう。
このイントロダクションだけで、もうたまりません。これだけヒリヒリしたムードのハードボイルドな映像を撮れる監督が(もちろん一般映画含めて)ヘンリー塚本以外にいるのでしょうか。
見つめられていた女は、実は二日前に密入国してきた中国人。そのたどたどしい日本語と、見つめていた女のサディスティックな関西弁のやりとりがまた痺れます。
「女の私にキスされて気持ち悪うないんか?」
「男きらい。女のまんこ好き。大好き、すごく好き」
二人は繰り返し、繰り返し「おまんこ」という言葉を口にし、さらにそこに中国語で同じ意味の「ピー」という言葉も加わっていきます。
そしてX字型に立位拘束された中国女の白い肉体を強引に愛していく関西女。そして全身を痙攣させて、激しい反応を見せる中国女。生々しすぎる切なさを感じさせる二人のセックス。いやぁ、これはすごいものを見てしまったという気持ちになりました。
これが第一話の「M女のラブホテル」。不良少女が女教師の手管に悶絶させられてしまう第二話「担任教師はレズ」、夫とのセックスよりも隣の主婦との禁断の関係に燃え上がってしまう第三話「亭主より女とできた妻」も大変素晴らしいものです。
まぁ、実際のレズのリアルとは違うのかもしれませんが、ヘンリー塚本ワールドではこれがリアル。とにかく世界観に揺らぎがないのが素晴らしいですね。
独特のセリフまわしとキャラクター造形、細かいディティール描写(デートを前に浴室で下半身だけを剥き出しにしてシャワーで洗う主婦とか)、おなじみのディープキスを中心とした湿度と粘度の高い性行為。
お好きな人にはたまらないのですが、苦手な人にはなかなか受け入れられないテイストでしょうね。
いや、でも、僕も以前は駄目だったんですよ。狙ってる世界はわかるんだけど、これはちょっと僕は苦手、なんて思ってました。それが今はもうヘンリー塚本信者と言ってもいいくらいにハマってます。この味わいを理解するには、ある程度の人生経験が必要ということでしょうか。単に年を取っただけかもしれませんけどね。
それにしても「M女のラブホテル」の緊張感は、すごい。この話だけでも、多くの人に観てもらいたいなぁ。
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