文=横田猛雄
絵=伊集院貴子
【精液採集】
それで何やら楕液という言葉は、人前でロに出したらいけないらしいということだけは分かった玉置ですが、どんなものかということが具体的にはさっぱり分からず、ついに昨夜は満足な回答が得られなかったようです。
割り切れない気持ちの解決を求めたい玉置は、今日も学校へ来てから、誰かれかまわず捕まえては小声で、
「精液で何や?」
としつこく聞き廻っていました。
それが余りにしつこいものですから、隣の席の赤塚正子という子が、
「このボケはほんまに何も知らんのやなあ、精液ちゅうたら父の乳やが、乳は母だけが出すのと違うのやぞ、こいつそんなこと言うとるとこ見ると、まだ剥けとらせんのやな? いつか一遍面倒見たらなあかんぞ、クリクリに剥いて豚みたいに種抜いたらんとあかんのやなあ、ケッツから手突っ込んで、アルプスの山の少女ハイジみたいに乳搾りしたらなあかんわ、自分の出した乳見たら一番よう分かるやろうし」
と言うと、その後ろの佐脇秀子という子が、
「うちは豚やのうて牛飼うとるけど、牛のは凄いんやに、ケッツの穴から手突っ込んで肘まで入れて、中でオイデオイテすると、チンボがピンピンに立ってきて、水鉄砲みたいにビシュービシューッて種が飛ぶんや、色々な所から種買いに来よるわ」
と淡々と言ってのけました。
私はそれを聞いて、先日図工の時間に写生で見当山へ行った時見たあの種豚の夏ミカンのように大きな睾丸を思い出し、そうか豚の精液は高い値で売れるのかと思うと感無量といったところです。
あどけ無くおぼこい玉置も、赤塚さんや佐脇さんの話から、何かしらケッツの穴から手突っ込まれて中でこね廻されると、チンボから種とか乳とかいう小便とはちがう妙な物が出るらしいということが分かったようです。
それで今度は休み時間に廊下で隣の組の友達に、両足を開いてお尻を後ろへ突き出し、自分の両手で自分の尻たぶを左右に開いて、
「精液採集て、こうやってケッツの穴へ手突っ込まれて乳搾りみたいにしやれるんやぞ、知っとるか?」
と言ったり、誰かの背後からそっと近付いて、示指をそのお尻の割れ目に突っ込んで、
「精液採集」
、と言ったりして騒いでいます。
落合先生や上田先生から、すでに何回もお尻の穴から指入れられて前立摂護腺のマッサージをしてもらったことのある私は、玉置に、
「お前精液見たことあるのか?」
と聞くと玉置は、
「知らん、また見たこと無い」
と答えました。
また本当に知りもしないのにこいつが一日でたちまち全校に『精液採集』という言葉を流行らせてしまいました(先に私が検便されたこともこいつが一日で全校に周知させてしまったのです。
全くもう放送局のような奴です。
腹が立ちますが、すぐ横田、横田と言って摺り寄って来ます)。
さて診察室からはテスティスのくぐもったような喜悦の声が生々しく聞こえてきます。
両足を上に上げて自分の膝の裏を抱えよ、とか、四つん這いで股を拡げよ、とか、寝台の上に登ってウンコする時みたいにしゃがんでみろ、とか、大きく両足を開いて立って、身体を前に折れ、とか婦長さんの命令する声が響き、入れ替わり立ち替わり、一滴も残さす乳搾りをされているらしく、生々しい呻きがかなりの間継続します。
乳搾りとは本当にうまいことを言ったものです。
この頃テスティスが腰がふらついて安定を失っているのは、毎日楕を搾りつくされているからなのでしょう。
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