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▼ 大肛門狂時代 お尻の穴のお勉強【83】

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文=横田猛雄
絵=伊集院貴子


いたずら盛りの猛ちゃん達は美濃屋の安太郎の大ギンタマに興味津々です。実際に大ギンタマを触ってみたくてしょうがないようです。なんとか安太郎をおびきよせ、キンタマをつかんだまではよかったのですが……。美濃屋の婆さんが出てきて大変なことに……。


【学校へ】

学校へ戻る道で玉置が、

「拳骨の跡がコブになって脈打っとる」

と言うので皆頭に手をやり、

「ほんまや、熱もっとる」

とか、

「岡倉先生ほんまにビンタとるんやもん、ロの中切れた」

とか大変で、校長先生は、

「今度あんな事したら一発では済ませんぞ、ええか」

と私達に言い、先生同士で、

「この年の子はむつかしい年齢やで横道へ曲がらんように少々痛い目に遭わせても真っ直ぐに引っ張ったらなあかん」

と言っていました。
校長先生は、

「それにしてもあの安ちゃん、もうそろそろ切(手術)らなあかんかのう、幼稚園行くのにズボンもはけやせんぞあれでは」

と言うと岡倉先生が、

「あの子の親は早う手術させたがっとるのですか、あのお婆ちゃんが昔人間やもんで、人間の身体に金気を入れるのは絶対良うないから大事なこの家の跡取りにはそんなことさせられん、て頑張っとるのでむつかしいんですわ」

と言いました。
金気とは鉄のこと、つまり手術のメスのことで、昔風の人は切除して何か身体から取り去るのは良くないとかたくなに信じていたのです。
校長先生は、

「私らの子供の頃にもあんな大ギンタマが同級生に一人おったが、そう言やあ、大抵一部落に一人か二人は昔からあんなんがおるもんやのう、昔は兵隊検査があるで、男は皆二十一歳、今で言う満二十歳になると一月十五日にはよう雪が降る中を、紋付袴で小学校や役場へ呼び出されて素っ裸にさせられて兵隊検査や、あんな大ギンタマやと甲乙丙丁のうち丙か丁やから兵隊としては不合格やから戦争に行って死なんでもええ代わりに非国民やて言われて半人前の扱いやったが、あの同級生の橋本正君ていうのは何や京都の西陣に婿に行って今では豪勢なもんやで言うが、本当に人間の運命は分からんのう、甲種合格で胸張っとった者がほとんと戦死して、非国民や言われて小さくなっとったのが今大金持ちやて言うわ、勉強も全然あかんだのに不思議なことや……」

と。
実は大ギンタマの威力は善光寺チンボもたじたじのものであることを世俗の凡夫は誰も知らないのです。
『アンコウ鍋と脱腸の大睾丸、見掛けはグロでも食ったら最高』と言う通人のみの知る真理、酒屋のお姉さんに教えてもらうまで私も知らなかったのです。
(続く)


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