文=横田猛雄
絵=伊集院貴子
【大ギンタマの裏門叩き】
その日は学校が早く終わったので、母の使いで新聞のお姉さんの所へ『主婦の友』を返しに行くと、丁度酒屋のお姉さんも来ており、きのうの事件のことを話していました。
それは酒屋の家とあの美濃屋は親類ですし、お姉さんの所では美濃屋の味噌を小売りしていますので毎日行き来があるから、今日の朝のうちにそのニュースは伝わったのだそうです。
酒屋のお姉さんは、
「中学校の子が四人して安坊のキンタマ引っ張っていじくり廻したて言うけど、なんや猛ちゃんらがやったんか、あそこの婆ちゃん怒ったら怖いやろ?」
と言うので私は昨日の一件を詳しく話しました。
新聞のお姉さんは、それを聞いて腹を抱えて笑い転げましたが、酒屋のお姉さんは、臨月に近い大きなお腹をいたわるようにしながら、
「そんなに馬鹿にするもんやないわ、脱腸の大キンタマは見かけはみっともないけど、捨てたもんやないんやに、千人に一人か万人に一人か知らんけど大ギンタマに生まれたら普通の人が及びもつかんくらいに出世するあれは福徳のしるしやからむしろエリートや、選ばれたる少数者ということや」
と妙なことを言い始めたのです。
「あんなみっともないもののどこがエリートなんや」
と言う新聞のお姉さんの疑問に対して、
「『脱腸の大ギンタマとアンコウの胆は、姿はグロでも味は絶品』て言うのをあんたは知らんのやなあ、うちは店におると夕方色々な人が来て、店で升酒飲んで行かさるけど、人がようけ集まると大体助平な話の花が咲くけど、脱腸の後家殺しなんて言葉をよう年寄りの人が言うので何のことやろうと思うて聞いてみたら、京都のサノサの節で皆して声を揃えて、
「キンタマよ〜〜ゆんべの所へ行こうじゃないか〜〜トサッサ中に這入れるお前さんはええが……〜〜裏門叩いて待つ身の辛さよ〜〜流す涙は加茂の水、アーイショヨイショ』て歌うで笑うんやわ、裏門叩いてペシャンコペシャンコやてお爺さん達腰使うて見せるんやわ、裏門叩くは後家殺し、一遍喰ったら味よう忘れん、て言うて……」
と酒屋のお姉さんが言いました。
そして流し場からコンニャクを一丁持って来た酒屋のお姉さんは、新聞のお姉さんを裸にさせ、畳の上に仰向けに寝かせるとその両足を赤ん坊のおむつを替えるときのように上に挙げさせ、その両足を空中で胡座を組ませて自分の手でその足首を持つようにさせました、そうするとお姉さんのお尻の穴は真っ直ぐ天井を向き、お姉さんが呼吸するのに合わせて磯巾着のようにキュッキュッと息づいています。
(続く)
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