著者=大泉りか
価格:1,365円
ISBN-13:978-4902307474
発売:2013年4月25日
出版社:スコラマガジン
文=安田理央
SMショーのM女からキャットファイターなどを経て、現在は小説家として活躍する大泉りかが「SMプレイ」について語った一冊。最近急増している「エッチなハウトゥ本」のひとつではあるが、そこは身をもってエロを体験してきた大泉りか。ひとつひとつのリアリティが違う。
前書きで大泉りかは、本書はマニア向けではなく、セクシャルなコミュニケーションのひとつとして「SM」を楽しむことを目的としていると宣言している。
そして、身体に怪我をしない、心に傷がつかないライトSMを推奨します、と言う。ライトである以上、肉体的に怪我をしないというのは当たり前ではあるが、「心に傷がつかない」と言うポイントは、意外に見過ごされやすい。この辺は、さすがに実体験を重ねた人の言葉だなと感心した。
なるほど本書ではプレイに入るまで、すなわちパートナーをどうすればSMに誘えるか、という部分にかなりの分量を割いて説明している。そう、実際にこういった本を手にする人にとって、最大の難関はそういったプレイをパートナーが受け入れてくれるかどうかなのだろう。
「女性には、誘われたから、という逃げ道を作ってあげる事」
「SMグッズでも可愛らしくオシャレなものだと受け入れてもらいやすい」
「ソフトな言葉責めから始めるといい」
「服を脱がす時に手首のところで止めて擬似拘束にする」
といった実践的な小技は、女性ならではの視点で非常に勉強になる。
各種プレイについての紹介や説明も、実に具体的。
「グッズを使いまわしするのは止めよう」
「犬用の首輪はノミよけの薬が塗りこまれている場合があるので注意」
「蝋が洋服に付着した場合はドライヤーの熱風を当てれば蒸発する」
など、本で読んだ知識だけで書いている人には思いつかないポイントだろう。
現時点でパートナーがいないという人にとっても、こうしたリアリティのある説明は想像が膨らむはずだ。特に「応用編」では、官能小説さながらにプレイを描写していくので、読んでいるだけでもかなり興奮する。
また各項目に添えられた板野りんこによるイラストも秀逸。一コマ漫画のように笑えるものが多く、そこにも板野りんこ自身の実体験が垣間見えたりして興味深い。
SMを語ろうとすると、「SMとは生き方だ」「そんなものはSMではない」など、つい観念的な話になりがちなのだが、本書はあくまでも具体的で実践的。カップルが性を楽しむためという目的がはっきりしているので、「SMとは何か」などという定義問題などはサラリと流している。そんなものは性を楽しむ上では必要ないからだ。
そして従来のSMのシンボルである緊縛についても、あまり触れられていないことが象徴的である。多くのSM入門書では、メインコンテンツとなる「縛り方」も、本書では重要視されていない。むしろオシャレな拘束具を使うことや、便利なボンデージテープを使うことが推奨されているくらいだ。
SM的なプレイは浸透しているのに、従来の「SM」というジャンルが衰退の一途をたどっているという現状に即した判断だろう。
そういう意味を含め、本書は誰にでも安心して薦められるSM入門書となっている。一応、男性向けとして書かれているが、女性もこれを読めば、SMに対する恐怖感は薄れ、むしろ興味を持ってもらえるだろう。
本書を一緒に読むこと自体が、二人のプレイの始まりとなるのだ。
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