『世界のサブカルチャー(翔泳社)』
監修=屋根裏
レビュアー=井上文
世界に散らばるマイナーな本、雑誌、音楽、絵画etc。世には「サブカルチャー」と分類されるものたち(でも分類はどうでもいい)が、てんでバラバラに放つヘンテコなエネルギー!
『どどいつ文庫』というホームページがあって、古今東西の珍奇かつ味ある品々を大量に紹介&販売してくれているのですが、そこの管理人さんがこの本『世界のサブカルチャー』でも執筆者の一人になっていたので興味を持ちました。
『どどいつ文庫』を知ったのは10年くらい前だったと思います。当時私は古今東西の古いエロ本を集めていて、小さなコラムで紹介したりしていたのですが、親切な読者がわざわざ訪ねて来てくれて『とどいつ文庫』のカタログをくれたのです。カタログと言ってもコピーを束ねただけのもので、最初からコピーだったのかコピーじゃないのをコピーしてくれたのか分かりませんが、私の知らない海外の本や雑誌の表紙がビッチリズラリと並んでいるのを見るのは子供の頃に昆虫図鑑を眺めていたのと同じ楽しさがありました。情報としての価値だけでなく、それ自体がモノであることの快感もあったと思います。
『世界のサブカルチャー』は、『どどいつ文庫』とはまた別のアンテナを持つ老舗ホームページ『屋根裏』で扱われているモノを中心に、やはり世界中の珍奇かつ味ある品々を紹介している本です。メインの著者である屋根裏さんを筆頭に、不案内な人にも親切で分かりやすい解説をしているのがポイントになっています。前書きに「実のところこの本は、世界のサブカルチャーの歴史を振り返ってサブカルチャーとは何かを定義付けたり、体系化するような内容は何もない。(略)サブカルチャーを真面目に勉強したいという人は、はいサヨウナラ」とある通り、集められた品々が自分で語るものを小難しくイジリません。美味しい素材を、軽く塩する程度で、本来の味で食べさせてくれる店という感じです。
「古今東西」というよりは、「今の東西」に焦点を当てています。扱っているモノは多種多様かつ膨大で、そのこと自体がこの本の中にカオスを形成していますが、各品々の作者が今現在も世界のどこかで新食感を生み続けているという事実には、「サブカルチャー」が持つ予知不能なパワーを感じさせられます。結果、お勉強テイストのテキストでは得られない野放図な刺激と、その本自体のモノとしてのオモシロミを味わうことになるのです。
具体的な内容については、余りに多岐にわたっているため一部分だけをピックアップすることができません。はっきり言えるのは、タイトルに「サブカルチャー」とあるからといって、レッテルに囚われなくていい本だということです。ある意味で人間図鑑と言っていいのかも知れず、だとすると食べ物屋というよりはサファリパーク的でもありますね。
ライオンとか興味のあるゾーンだけでなく、最初から最後まで全部見たほうがカオスを感じられてより楽しいです。その点では、敢えて「世界のサブカルチャー」と大きく括った意義もよく分かりますし、ネット(部分だけを切り取ることができる情報)ではない「一冊の本」にした意味も打ち出されているように思います。
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