文=抱枕すあま
↑『SunShop御徒町店』。急な階段を下りたところに、私の愛する店があった。
(※この記事は2009年にWEBスナイパーで掲載されたものを再編集の上で再録したものです)
2009年9月23日。3の付く日である。3の付く日といえば、『SunShop御徒町店』では、すべてのDVDが20%引きとなる日である。DVD販売の激戦区である秋葉原に位置する『SunShop\x87U秋葉原店』よりも安くなる3の付く日は、日本で一番安くDVDが買える穴場として有名であり、店員さんがトイレにも行けないほど、いつも混雑していた。
ただ、この日だけは特別であった。なぜなら、『SunShop御徒町店』での最後の20%引きの日であった。そして、この日が『SunShop御徒町店』にとって、最後の営業日でもあったのだ。
ちょうどこの日、私は偶然『SunSop\x87U秋葉原店』を訪れていた。そこで、『SunShop』の総帥から、初めてこの事実を知らされたのである。
す「はい、このロリロリいや~んな鬼畜DVDください。あっ、しまった! 今日は3の付く日だから、御徒町店で買えばよかった!!」
総「もう、遅いよ! あっ、そういえば言ってなかったっけ? ……実はね、御徒町店のセールは、今日が最後なんだよ」
す「えっ! なんで!? セールをやめるの?」
総「そうじゃなくて、御徒町店は閉店することに決めたんだよ」
す「何があったんですか!?」
総「まぁ、簡単にいうと、お店の賃貸契約の更新ができなかったんだ」
す「そうだったんですか……。この不景気で、売り上げが落ちたとか、そういう話じゃないんですね?」
総「そういう訳じゃないんだ。だって、ちょっと前まで、秋葉原店の店長が御徒町店で独立するって話をしてたくらいなんだよ」
す「う〜ん、そうですか……。閉店というのは、とっても残念ですね。あのお店には、思い出がたくさん詰まってますから」
総「そうだよね。私より、すあま君のほうが御徒町店には思い入れがあるよね」
そうなのである。実は、『SunShop』の総帥よりも私のほうが御徒町店との付き合いが長いのである。そして、非常に思い出深い場所なのである。このお店がなかったら、私はこうしてコラムを書くこともなかっただろう。
私が最初に御徒町店を訪れたのは、今から14年前の春のことだった。その当時、私は学生であり、まだ名古屋に住んでいた。ちょうど就職活動をしており、東京での入社試験を受けた帰りに、偶然立ち寄った御徒町で、このお店を見つけたのである。それはもう、本当に偶然というより他にない。
御徒町という場所は、特にビデオ店がたくさん集まっている訳ではない。あの当時はインターネットではなく、まだパソコン通信と呼ばれていたような時代だったので、ビデオ店の情報も特に持ち合わせてはいなかった。そしてなにより、御徒町店は雑居ビルの地下1階という、非常にわかりにくい場所にあったのだ。
ただし、後から聞いた話だが、この時はまだ『SunShop』ではなく、大洋図書の『ショップタイヨー』であった。名古屋のビデオ店では見たことのない、マニアックなビデオや書籍の充実ぶりに驚かされたものである。
この時、私は松平龍樹氏の官能小説『セーラー服下半身解剖』(二見書房)を購入した。これは、当時大人気であったセーラームーンの主人公たちが繰り広げるパロディSMモノで、未だにお世話になっている。
中学生に浣腸、輪姦、ロウソク責め、電流責め、そしてついには獣姦までしてしまうという、非常に鬼畜な作品である。名古屋へ向かう帰りの新幹線の中で、私はずっと興奮しっぱなしであった。
その後、私は横浜の会社に就職することになったため、休日のたびに京浜東北線に乗り、御徒町まで出かけて行った。だが、いつの頃からか、徐々に品揃えが悪くなり、わざわざ横浜から出かけているというのに、お店が休みとなる日が増えてきた。
これも後から知ったことだが、その頃に『ショップタイヨー』が閉店し、別の経営者に居抜きのままお店が渡ったらしい。その後、今の『SunShop』の総帥がお店を購入し、現在に至っているのである。それからは、いつ行っても営業していて、品揃えもさらにマニアックな方向に突き進むようになっていた。
総帥(当時は御徒町店の店長)と知り合ったのは、雑誌『S&Mスナイパー』のイラストや漫画でおなじみだった、イラストレーターの金井清顕氏の紹介であった。当時、私が主催していたオフ会に、総帥がやってきたのである。
しかもこの時、総帥が一人の友人を連れてきていた。それが、『SMグッズのエピキュリアン』の社長である。縁というのは不思議なものである。この出会いが元となり、ついには監督として『SM探偵団』という宮地奈々ちゃん主演のDVDまで作ってしまったのだ。
他にも、『スナイパーEVE』(ワイレア出版)で新連載『緊縛私論』を開始した荊子さんや、当時はライターであり、今では映像会社の社長となった神田つばきさんとも知り合いになることができた。
『SunShop御徒町店』から始まった縁はさらに広がっていき、当時の『S&Mスナイパー』のW編集長やI氏と知り合いになった。この出会いにより、『WEBスナイパー』をI氏が始めたときに声をかけてもらい、このコラム『すあまにあ倶楽部』が誕生したのである。
総帥と仲良くなってからは、本当によくお店に通った。何度行っても、御徒町店には思いがけない作品を発見する喜びがあったのだ。今でも鮮明に覚えているのは、頭に馬のマスクを被った全裸の女性が延々とスクワットをしているだけの作品や、鯉にフェラチオさせている作品などである。お店に行っては、「誰が買うんだ!!」と総帥にツッコミを入れまくっていたのだ。
あまり知られていないが、『SunShop\x87U秋葉原店』と同様、御徒町店にもマスコットのリアルドールがいた。ただし、秋葉原店のように、檻の中に入れられていなかった。そのため、展示して数日後には、マンコの部分が盗まれてなくなっていた。
どうやら、マンコは使用後に取り外して洗えるようになっていたのが災いしたようだ。不憫に思った私は、コレクションの中からマスコットに似合いそうなブルマをプレゼントし、はかせてあげたのである。リアルドールのお尻が想像以上に大きかったため、はかせるのにはとても苦労したものだ。
このように、御徒町店には思い出が詰まっているだけでなく、私にとってかけがえのない、とても大切な存在なのである。9月26日の土曜日。私は、御徒町店に最後の別れを告げるためにお店へと向かった。しかし、御徒町店はすでに閉店しており、お店のある地下1階に降りる階段は、シャッターで固く閉ざされていて、お店の中に入ることさえできなかった。
その時、偶然、シャッター越しに御徒町店の店長の姿を発見した。無理にお願いし、片づけで忙しいお店の中に入れてもらった。つくづく、私にとって縁のあるお店である。店長に話を聞いたところ、
「本当は、25日までお店をやろうと総帥とも話していたんですけどね。急遽、23日で閉店にしたんですよ。ちょうど3の付く日でセールをやったし、連休の最終日だったし、きりがいいかなって」
と話してくれた。
すでに、店内のDVDはすべてダンボールに入れられ、山積みになっていた。今までに一度も見たことがない、空になった棚だけが店内に並ぶという光景が広がっていた。私の知っている『SunShop御徒町店』は、もうそこにはなかったのだ。
す「ねぇ、店長。片づけをしているところ悪いんだけど、このダンボールをもらっていい?」
店「いいですけど、どうするんですか? 売れ残ったDVDは、すべて秋葉原店に持っていって、在庫セールとして販売する予定ですから、あげられないですよ」
す「違うんだ。まだ片づけていないものを、ダンボールに詰めようと思ってね」
店「もう、ダンボールに詰められるようなものはありませんよ」
す「いや、まだとても大切なものが残っているよ。絶対に忘れてはいけないものがね」
店「何のことです?」
す「僕らの思い出さっ!!」
(続く)
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