〜堕落妻・律子〜【4】
それでは、お耳汚しをいたします。私、今はこんな仕事をしておりますけれど、こう見えましても一時は教師をしてたんです。大学を出ましてから北陸の高校に赴任いたしまして、一年生の、保健体育を担当しておりました。主人と知り合いになりましたのはその折です。主人は三年生の担任で、私からすると大変頼りになる、それは立派な先生でした。
恋に落ちましたのは私のほうです。当時の私はまだおぼこ娘でしたから、アタックも何もできませんでしたけれど、二十七歳の時にようやくお声をかけてもらえまして、三十歳の誕生日に、プロポーズをしていただけました。それからの数年間は本当に幸せでした。今思い出しましても夢のようです。けれどある日、思いもかけない訪問者が……。
夕方の、五時くらいだったと思います。チャイムが鳴りましたので出てみますと、戸口に、主人の学校の制服をきた男の子が一人で立っておりました。気の弱そうな、優しい顔をした子で、思い悩んだ様子で「あの、僕……庄田先生の生徒なんですが……」と。
庄田というのは、主人の苗字です。つまりその子は主人が担任するクラスの子で、折り入って相談があるとおっしゃるものですから、とりあえずリビングまでお通ししました。主人が帰宅するのは夜八時くらいなんですけれど、私も以前は同じ学校の教師だったものですから、親ごころのような気持ちで。
ところが、ソファで向かい合ったその子が言いだしたことが、とんでもないことでした。「すみません……突然来ちゃって」と態度は殊勝なんですけれど――。
「あの……実は僕、僕……庄田先生にレイプされているんです」
「え?」
「聞いて下さい! 最初は、サッカー部の部室でした。庄田先生に呼び出されて、自分は男の体にしか興味がないって……お前もそうだろって……。そりゃ抵抗したけど、お前の成績全部、赤点にするぞって。僕、女性との経験だってまだないのに、無理やり裸にされて、お尻の穴を……。もう痛くて……気持ち悪くて!」
(つづく)
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