〜堕落妻・律子〜【5】
私には、その生徒さんの言っていることが何が何やら。
主人がゲイ? 教え子と関係している? しかも無理やり? 女とのまぐわいに興味がない? 嘘よ……信じられない!
頭がくらくらしてしまって、あいづちどころではありませんでした。
「おばさん、聞いてくれてます?」
「ええ、もちろん。でもそんな馬鹿な話……何か証拠でもあるの?」
私が聞くと、その生徒さんはふいに立ちあがってこんなことを言うのです。
「庄田先生に犯されて脱肛してる僕の肛門、見ますか?」
そしておもむろにズボンのベルトを外し始めたのです。もちろん慌てて止めました。家の中でパンツを下ろされたりしては、もうどうしていいか分かりません。
「ちょっと待って! お願い……気分が悪いの」
嘘ではありません。私は本当に吐きそうな気分になってしまっていたのです。
「少し……少し失礼させて……ごめんなさい!」
私は口に手を当て、ふらつく足取りで洗面所に行くと、げえげえと実際にもどしてしまいました。鏡を見ると顔が真っ青。それはもちろん、主人のことは信じておりましたけれど、生徒さんの顔も真剣そのもので、とても嘘をついているようには見えなかったのです。
その時、
「おばさん……」
いつの間にリビングからそこまで来たのか洗面所に生徒さんが入ってきて、
「まだ話は終わってないんです。さっき、相談があるって言ったじゃないですか。それを聞いてくれないと帰れません。……僕、最近、庄田先生とのセックスが気持よくなってきちゃって……怖いんです。このままだと、僕までゲイにされちゃいそうで。だから……その前に、どうしても女の人の体を知りたいんです」
固い表情でそう言って、後ろから私に抱きつくなり、息を荒くしながら胸を揉みしだいてきたのです。
「おいおいおい、来たねぇ、来たねぇ」
一条が生唾を飲み込んで身を乗り出す。
花岡も立て続けに杯を煽って興奮を露にし、真っ赤な顔で「続きを頼むぜ、姉さん」と先を促す。
律子は「はい、本当にお恥ずかしい話ですけれど」と言った後、少し間をおき、話の続きを淡々と語り始めた。
(つづく)
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