母娘陵辱残酷絵巻・花嫁崩壊〜【1】
「あなたにお料理教えられるのも今日が最後ね」
軽やかにフライパンを返す茜の横顔を見つめ、椿が感慨深そうに言った。
一家の主は8年前に病気で他界。以来、母一人、娘一人で生きてきた。
45歳になった椿の顔には、保険会社で昼夜を問わず働いてきた疲れこそあるものの、女としての最後の艶が濃厚に滲んでいる。
滑らかなセミロングの髪は高校生時代からの自慢。切れ長の瞳は「クライアント殺し」とよく同僚にからかわれている。
スレンダーで引き締まったボディラインは、体力維持のために始めたジョギングの成果で今も崩れてはいなかった。
その気であれば、再婚のチャンスなどいくらでもあったに違いない。
しかし、今の椿には大切に育ててきた娘・茜の幸せだけがすべてだった。
茜は明日、結婚式を迎える。
「お嫁に行っても習いにくるよ。毎日くる。お母さんが暇になってボケたら大変だもの」
出来上がったチャーハンを皿に盛りつけながら茜が言った。
冗談めかして笑っているが、内心では心から自分を心配してくれているのだと椿には分かる。
22歳。他の家の子であればまだ親の気持ちなど知ろうともしないネンネだったかも知れない。
しかし今、「一丁上がり!」と胸を張って見せる娘の姿には、すでに母性すら感じさせる優しさと美しさが溢れていた。
――がんばってきてよかった。
今日までの苦労を思い、椿の目には薄っすらと涙すら浮かんでくるのだった。
(つづく)
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