投稿者=良田博美(仮名)
【1】夫は長期出張で海外に……
今日も真紅の太陽が沈む。鈴掛の並木に、ちらちらと風に揺れる葉のなかに、燃えながら大きな円の美しい姿をしばらくとどめて。
仕事から家路につく私は、それがまるで自分自身の女そのものが、最後の輝きを見せながら精一杯悦びを歌っているようにみえた。
39歳。出産も終え、子供も手が離れ、今やっと女のよろこびが少しわかりかけできた。が、夫は長期出張のため外国に出かけている。
子供の頃から、なに不自由なく育った私。だが父母は、しつけや勉強のことについては、徹底的に厳しかった。
幼い頃、養女にきた私は、実の父母の顔を知らない。養父母は、なにごとにつけても潔癖な質(タチ)で、少しの嘘も許すことはなかった。
特に、挨拶は両手をついてきちんとしなくてはいけない。また文字をきれいに書くということをとても大切にして、小学校低学年でも、ノートは丁寧にきちんと書かないと一晩中でも書き直しをさせられたし、姿勢を正すことを厳しく言われた。少しでも勉強中に姿勢を崩すと、和裁用の長い物差しで容赦なくたたかれる。
(続く)
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