魂の暗部を狙撃するSM情報ポータル SMスナイパー
▼ 読者投稿小説「熱い花蜜」【4】

作= 鬼堂茂


SM雑誌のグラビアに載っているモデルは高校生時代に憧れていた同級生だった!? 実在のモデルを元に妄想を膨らませて描いた投稿SM小説。久しぶりの対面、握った秘密、そして密かに育んできたサディスティックな願望......。危険な再会の果てに行き着くアブノーマルな愛の結末は如何に。『S&Mスナイパー』1984年4月号に掲載された作品を、再編集の上で全13回に分けてお届けしています。


【4】再会

翌日、いつものジャンパーにジーパン、スニーカーという格好をやめて、ワイシャツにスラックス、コンビシューズを履いて、竹野はマンションを出た。

セーターを首に巻いている。秋子との約束の時間まで、まだ三十分あった。駅前の「マクドナルド」で、ハンバーガーを食べて時間を潰した。

約束の時間に改札口に行くと、秋子はすでに来ていた。秋子は、オフホワイトのワンピースの上に、マロン色に白のパイピングブレザーを着ていた。

長い髪が改札口を吹き抜ける風に揺れている。竹野に気付くと、秋子は手を振った。

「やあ、久しぶり。綺麗になったね。最初、判らなかったよ」
「ウソーッ。竹野君って、しばらく会わないうちに、お世辞が上手になったのね」

甘く甲高い声が弾んだ。

「お世辞じゃないよ」

そう言って、秋子の体をさりげなく観察する。オフホワイトのワンピースの上から、下に着けているベージュのブラジャーが透けて見えていた。

「どうしよう。喫茶店に行こうか? それとも、僕の部屋に行こうか?」 
「そうね、喫茶店でもいいけど、せっかくここまで来たんだから、竹野君のマンションに行ってみたいわね」
「エッ! 僕のマンション、よく知ってるね」
「だって、住所録に『代沢マンション』って書いてあったから」

と、秋子は舌をペロッと出した。

「ああ、そうか。じゃあ、そうしようか」

そう言って、竹野は秋子と並んで歩き出した。


「代沢マンション」は、七階建ての、まあまあのマンションだ。玄関を抜けて部屋に入ると、部屋を見回した秋子が目を丸くして言う。

「へえ、竹野君って、意外に綺麗にしているのね」
「そうでもないさ、物がないだけだよ」 

竹野は言って、サイフォンのアルコールランプに火を点けた。

「ねえ、煙草吸っていい?」
「いいよ、灰皿なら、こっちにある」

竹野は台所のテーブルを指さした。

「竹野君も、吸うの?」
「うん、たまにね。二浪もしていると、煙草吸うようになるね、どうしても」
「ふーん。あ、想い出した。竹野君、東大志望だったわね。クラス一の秀才だもん」
「よせやい」

竹野はアルコールランプの炎を吹き消して、カップにコーヒーを注いだ。その手がかすかに震えていた。
(続く)


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