魂の暗部を狙撃するSM情報ポータル SMスナイパー
▼ 読者投稿小説「熱い花蜜」【5】

作= 鬼堂茂


SM雑誌のグラビアに載っているモデルは高校生時代に憧れていた同級生だった!? 実在のモデルを元に妄想を膨らませて描いた投稿SM小説。久しぶりの対面、握った秘密、そして密かに育んできたサディスティックな願望......。危険な再会の果てに行き着くアブノーマルな愛の結末は如何に。『S&Mスナイパー』1984年4月号に掲載された作品を、再編集の上で全13回に分けてお届けしています。


【5】罠

コーヒーの芳しい香りが竹野の鼻をくすぐる。

「うん、ありがとう。竹野君、まだ浪人してるの?」
「大学が、まだ来なくていいってさ」
「秋子は、確か、青山学院大だろ、女の子に一番人気があるんだってね。雑誌に書いてあったよ」
「そんなことないわよ、名前負けよ。渋谷や表参道に近いからじゃないの? それに、ちょっと勉強すれば入れそうなところに、人気があるんじゃないかな」
「ハハハ、ちょっと勉強すれば入れそうか、面白い言い方だね」

秋子も笑ってコーヒーを飲んだ。 

「ところで、竹野君、来年、大丈夫?」
「さあ、どうかなあ」
「東大、ガンバッテネ。合格したら、プレゼントあげようか」
「プレゼント?」
「うん、私、秘かに期待していたんだ。竹野君なら、絶対東大に入れるってね」
「そ、そんなに、期待されると困っちゃうな。プレゼントって、何? それによっては、ガンバロウかな」
「何がいい」
「そうだな、何がいいかな......秋子でも、もらおうかな」

秋子を正視して言った。

「エッ、私!?」

と、秋子は言って、キャアキャア陽気に笑った。竹野もつられて笑った。しかし、その瞳は冷めていた。

「あっ、そうだ。秋子に見せたいものがあるんだ。ちょっと待ってて」

急に思い出したように、竹野は台所から部屋に行き、押し入れを開けた。

「なあに?」
「......」

押し入れを閉じて、台所に戻り、秋子の前に立った。

「これだよ」

背中に回していた腕を前に出し、秋子の眼前に「S&Mスナイパー」のヌードグラビアを突きつけた。その瞬間、秋子は口をポカンと開けて、信じられないといった顔で竹野を見た。

秋子の顔が、みるみる蒼ざめる。

「な、なによ! こ、これが、どうしたっていうの!」

蒼ざめた顔で、つっかえながら、怯えた悲鳴をあげた。

「これ、秋子だろ?」
「知らないわ!」

秋子の体が、自然と後に退がる。

「隠しても駄目だぜ。こっちへ来いよ!」

秋子の腕を強引に掴み、ベッドに突き飛ばした。

(続く)


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