闇の中の魑魅魍魎【1】
闇の中の魑魅魍魎【1】
身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。
●拘置所の中で
誠子は今、初めて一人きりになりたいと思った。
一人になって、自分の犯した罪の意味を、考えてみたかった。
その後で、控訴するか否かの結論を出したかった。
だが、雑居房の中には、誠子の他に二人の女性未決囚が入っていて、誠子のそんな気持ちを実
現させてくれるはずもなかった。
誠子はほんの数時間前、判決の言い渡しを受けたばかりであった。
懲役十年であった。
罪名は殺人。
もう一人の共犯者である大利根二郎は、誠子よりも五年重い懲役十五年の刑であった。
直接手を下したのは自分だけであるのに、手を下していない二郎が何故、自分よりも重い刑な
のか誠子は不思議であった。
今度弁護士が接見に来た時に相談したいことを考えておかなければと思った。
今日、言い渡しがあった時、二、二日後に会いに来ると言っていた。
目を閉じると誠子の二十五年間の思い出、記憶が堰を切ったように一度に押し寄せてきた。
頭の中に、得体の知れないものが充満し、膨張し、誠子は一瞬気が遠くなった。
誠子が拘置所に入ったのは六カ月前だった。
殺人罪で起訴されてから間もなくのことであった。
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