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▼ 闇の中の魑魅魍魎【3】

闇の中の魑魅魍魎【3】


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文=法野巌
イラスト=兼田明子

闇の中の魑魅魍魎【3】

身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。

●拘置所の中で

誠子は逮捕され、起訴されたのは今回が初めてであった。
だから刑事手続きに関しては全く無知だったといって良い。
保釈になるのにも金がかかること、殺人罪の犯人に対しては犯行のすべてを認めても、保釈に

なる可能性はほぼゼロであることなどは、拘置所に入ってから知ったことである。

拘置所に半年も入っていると大抵の被告人は、専門家並の知識を身につける。
特に犯した罪が重大なものであればあるほどである。
殺人犯人でしかも誰がみても情状酌量の余地がないような者は、必死になって延命策を考え、

そのために、今、自分を縛りつけている法規の類いを研究し始める。

拘置所内での法律の先生は、専門書であり、前科のある再犯者である。
数カ月も室内に閉じ込められ、時間のたっぷりある彼らは、本を読んだり、手紙を書いたりの生

活の故か、それまで文章らしい文章を読んだことのないものであっても、それ相当こういった

現象を示すのは圧倒的に男の被勾留者に多い。
あるがままの姿、現状を受容するということに関しての性の違いであろうか。
端的に言えば男はあきらめが悪い。

誠子は、約半年もの間、読書らしい読書もしないで過ごしてきた。
毎日ぼんやりと無為に時間を費やしてきた。

だから、こんなにも頭の中が混乱したのは久しぶりのことであった。
懲役十年の判決の言い渡しを聞いてからのことであった。


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