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▼ 殺意の原点【8】

殺意の原点【8】


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文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣

殺意の原点【8】

棄てられていた若い女性のバラバラ死体は、性器を抉り取られていた……。

●底知れない愛欲

私と彼女との間に肉体関係が出来たのは知り合ってから一ヵ月ほど過ぎた頃のことです。
彼女はその貞淑そうな外見とは裏腹に、セックスに対してはすごく貪欲な女でした。
とにかく、男の肌と触れ合っていれば気持ちが安まるという女なのです。
男の肌そのものが好きなのです。
ですからセックスする時にも彼女はゴムの使用を嫌いました。
可愛い口から、

「私、生の方が好きなの」

などと言うのですから。

私は彼女の好色な性格に最初は気がつきませんでした。
私を求めるその姿態は、彼女が私を好きな故に情熱的なのだと勝手に自惚れていたのです。
しかししばらく経つと、彼女が私を求めるのは私を好きなことにもよりますが、それ以上に彼女の肉欲が異常なくらい激しいからだということがわかってきました。

彼女はクラブに勤める前は、丸の内の会社に事務員として勤務しておりました。
入社して間もなく、上司の課長と恋愛関係になり、そんな状態が三年ほど続いたということです。
勿論、課長には妻子があり、結婚を前提とした交際ではなかったのです。
この間に一度中絶をしたとのことです。
二人の間にはいろいろあったようですが、そんなことは聞いてもあまり面白くないことですから、私も詳しくはたずねませんでした。

二人が別れることになった理由は、例によって上司の妻に二人の関係がばれたからです。
彼女は会社に居辛くなり辞めました。
多分、上司も左遷されたと思います。
何しろ、怒った女房が会社まで怒鳴り込んで来たとのことですから。
そんなことがあって会社を辞め、友人の勧めでクラブに勤め出し、そして私と知り合ったというわけです。


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