ハングリー国家 日本の悲劇【7】
ハングリー国家 日本の悲劇【7】
強姦未遂事件を起こした少年には母親との不倫の関係があった。
●事件の核心
冬休みもあと一日で終わるという日、信子はセーターを買うつもりで渋谷に出た。
そのとき突然すれ違った男から、
「桜井君じゃないか」
と声をかけられた。
神保巨だった。
中学時代の同級生である。
二年ぶりの出会いであった。
その間の信子の成熟が彼には眩しかった。
最初の数分間は、二人ともぎこちない会話をかわしていたが、やがて、昔の二人に戻ったかのように、あれこれと話が弾んできた。
「ねえ、僕の家に来ないかい。帰るところなんだろう、何か用事があるの?」
いかに二年ぶりの再会の喜びがあったとはいえ、男友達の家に行くのは少々気が進まなかった。
しかし、素適なセーターは買えたし、もうすぐ冬休みは終わってしまう。
そんなことが重なって、一六歳の少女が慎重な態度に欠けたとしても無理もないことだった。
「そうね。いいわ」
信子には、さすがに巨しかいない部屋に入ることは、気の重くなることであった。
しかし、ここまできて、巨の気持ちを傷つけるようなことはしたくなかった。
事件が起こったのは炬燵に入って三〇分ほど経過した頃だった。
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