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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

聖水拝受に人生をかける「シッコスキー」さんの巻 第1回
10.13 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回この連載にご登場願った「シッコスキー」さんは、SM愛好家ではない。Mプレイに対しては嗜好も興味もない男性である。彼が求めるものはただ一つ、女性のオシッコを飲むこと。ただ、彼の場合、SM雑誌がそのきっかけを担っていたという。

★SM誌で目覚めたオシッコ願望

今回はM男さんとはちょっと違う。ちょっとじゃないな、だいぶ違う。
シッコスキーさんはロシア人ではない(バカでもわかる)。SMプレイをするなら最後は聖水を飲ませていただかないと気持ちが収まらないとか、ムチやロウソク、縛りと同じくらいに聖水が好きという人は多いかと思うが、シッコスキーさんは、ムチにもロウソクにも縛りにも興味がなく、その名の通り、ただただオシッコが好きなんである。要するにSMには興味がないのだ。
となれば、この連載には相応しくないとも思われようが、彼がオシッコに興味を抱くようになったきっかけはSM誌であり、今もSMパーティやSMサロンに出入りしているように、彼の願望を満たす場は長らくSMでしかなかった。おそらく本誌読者にも、少ないながら、シッコスキーさん同様の人もいると思われるため、今回は特別編として登場していただくこととなった。

「最初にオシッコを意識したのは中学の頃ですかね。それまでは全然興味はなくて、トイレの覗きもしたことがなく、したいとも思わなかったんですよ。それ以外のSMっぽいことやフェチっぽいことにも興味はなかった。普通に『平凡パンチ』(註1)とか、そういう雑誌で興奮してました。そういうところから始まって、だんだんいかがわしい雑誌にも興味が出てくるじゃないですか。おばあちゃんが店番しているような本屋に行ってエロ本を立ち読みしているうちに、SM雑誌にも手が出るようになって。ある日、中を見ていると、聖水を飲ませているページに目がとまったんです」

これがシッコスキーさんの運命を決定づけた瞬間だ。

「最初は『何をしているんだろう、本当に飲んでいるんだろうか』という好奇心だけだったんですが、毎月そういうページだけを見に本屋に行くようになりました。当時のSM雑誌にも、中に何ページかM向けのページがあって、探すと聖水を飲ませている写真があるんですね。おばあちゃんの目を盗んではそういうところだけを見てました」

おばあちゃんは「まあまあ、この子は若いのにヘンタイなのね」と思っていただろうが、シッコスキーさんは。おばあちゃんが想像していたような、ありふれたヘンタイではなかったんである。

「他にオシッコを飲む写真が出ている雑誌がなかったので、SM誌を見ていただけです。だから他のページはどうでもよかったんですよ」

そういった写真を見ているうちに、自分も飲んでみたいという欲望が少しずつ出てきたが、学生の分際でSMクラブに行くわけにもいかず、実行するにはもうしばらくの年月が必要だった。
そうこうするうち、ビニ本(註2)が登場する。シッコスキーさんは「45(シッコ)歳」としか教えてくれず、正確な歳は不明だが、この時20代前半だった。

「ビニ本でオシッコを飲ませるカットがたくさん出ているのがあったんですね。その頃にはオシッコを飲みたいという欲望をはっきり自覚してましたから、それを見ているうちに飲むしかないと思ったんです」

註1:かつてマガジンハウスから発行されていた男性向け週刊誌。セクシーなグラビアを多数掲載し、当時の中高生にとっては、買いやすいエロ本としても機能していた。1988年10月休刊。
註2:1980年代に流通した、一般の成人誌に比べ性器の露出度合いが高いアダルト誌。ビニールに包まれて売られていたことからこう呼ばれていた。

第2回に続く(「スナイパーEVE」vol.6より再録/2002年8月頃取材)





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