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人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
「傷男」さんは、若い頃に観た映画や雑誌の残酷シーンに魅了され、自らの体を痛めつけることに悦びを見出す。現在はSMバーなどでS女性に傷つけられることが無上の楽しみ。全身に残る無数の傷跡はマゾヒストの勲章なのかも。 |
★増え続ける体の勲章 ――これだけ傷があると説明がいらなくて便利。初めて行ったSMバーで、「SMは未経験ですか」って聞かれることはない(笑)。 「そうなんですけど、その代わり、『この傷はメスでやられた』『この傷は誰々にやられた』って一通り説明しなきゃいけない(笑)」 ――店に入って5分後には裸にならなきゃいけなくなるし。 「『前々から一度やってみたかった』ってみんな集まってきて、一度に4人も5人も体に傷をつけていきますから(笑)。そうやって皆にオモチャにされる感覚も好きだし、見られるのも好きだから、嬉しいんですけど、普段も体にサポーターをつけて隠さなければならなくて、苦労もあります」 ――渋谷のスクランブル交差点で裸になって、皆に見てもらいたいとは思わないんだ。 「そこまでは……」 ――と嫌がっているのに、無理矢理誰かにやってもらわなきゃ(笑)。 「あと、私は足フェチでもあるんですよ。つま先が好きで、踏まれるよりも奉仕がしたい。ただ、こういう体だと、そっちの方向には行かなくなってしまうんですよ。それが淋しいですね」 たしかに「足をご奉仕させてくだせさい」と言っても、「そんな体でいまさら何を言っているのか」って相手にしてくれなそう。 「体が悪くて、病院に通っているんですけど、花真衣さんのショーに出た時は医者に手紙を出して、『体に傷痕がありますが、ショーに出たためです』って説明しておいたんですよ。でも、私の体を見て、『どうしたんですか』って驚いている。手紙を読んでなかったんです(笑)。それ以来、どんどん傷が増えているのに、何も触れないでいてくれるんですけど、今度手術をすることになって、外科に回されるので、また医者に説明しなきゃいけない。面倒なので、道で転んだって説明しようと思っているんですけどね」 どの道でどう転べばそんな体に。転んで頭を打って意識を失っているところに、30人くらいの女王様がたまたま通りかからない限り無理だと思う。 ――この先、さらに突き進む以外もう残された道はないわけですよね。 「いや、そろそろ引退したい。体のこともあるし、お金も続かないし。花真衣さんにも引退するって言ったんですが、『できるわけがない』って信用してくれませんでした」 花真衣さんが正しい。 ――花真衣さんから電話があっても断わるんですよ。できますか。 「いやあ」 ――断われないんだったら、携帯番号を変えて、女王様たちが連絡できないようにするんですよ。そんなこと、できますか? 「……」 まだまだ傷男さんの体の勲章は増え続けそうである。 この項終了(「スナイパーEVE」vol.14より再録/2004年8月頃取材) |
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