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人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
「傷男」さんは、若い頃に観た映画や雑誌の残酷シーンに魅了され、自らの体を痛めつけることに悦びを見出す。現在はSMバーなどでS女性に傷つけられることが無上の楽しみ。全身に残る無数の傷跡はマゾヒストの勲章なのかも。 |
★苦手でも結局はすべて受け入れる 「2004年2月に大宮でやった時は都合が悪くて断わって、5月にまた電話かかってきて、今度は2日出た。それから他の人からも声がかかるようになって、いろんな劇場に出るようになった。この間も香取冴子さん(註1)に呼ばれて、池袋のミカド劇場に行ったんですよ。香取さんとは前にビデオにも出ていまして。『ステージに呼ぶから』って言われて客席にいたんだけど、何をされるのか全然わからない。あの人は、打ち合わせとかなんにもしないから。『上がれ』って言われて服を脱いで。そしたら、この辺(股間を示す)に消毒液をかけているんですよ。前に背中に火をつけられたことがあって、また火をつけられるのかとヒヤヒヤしていたら、バーベキューの串を刺した」 ――焼いて? 「焼かずに、そのまま刺されて、引っ張られて、それに縄をかけて吊られて。最初吊られた時は痛かったけど、そのあとはたいしたことがなくて、こんなこともできるんだなと思って、それからなんでも挑戦してみたい気持ちが出てきた」 ――それは玉じゃなくて、袋ね。 「袋。その時じゃないんだけど、タバコの火を押しつけられて、最初は熱かったけど、今は好きですね。今はSMバーとかでもよくやられています」 ヤンキーの根性焼きでも、ここまでの跡が残っているのはあんまりいない。 「ついこの間のことですけど、8月の25日に花真衣さんが出てくれというので、また出たんだけど、なんかひどいことをしそうだなと思ったんですよ。この時は私一人で、ハードな担当が他にいない。縛られて、絨毯用の錨を金槌で手の水かきの部分に打たれた。ギャーッって叫びましたよ。縄はとられたけど、手をとめられているから動けない。それで噛みつかれたり。それが終わって、乳首に刺青をされて、タバコの火を押しつけられて。最後に口の中でタバコを消すからツバを溜めておけと言われたんだけど、溜めとけと言われても、その前にギャーギャー騒いでいたから、口の中がカラカラですよ。水を飲みたかったくらいで。それでもちょっとは濡れているから、舌は大丈夫でしたけどね」 学校で手も挙げられなかった中学生が、今や人前でこんなことまで。 「そのあとは吊られて、その上にヒールで乗って。そのうちグルグル回すんですよ。よくM女さんがやられているじゃないですか。よくあんなこと我慢できるなと思っていたんですけど、我慢するしか、どうしようもないですよね。花真衣さんはステージが終わったあとでも、まだやりたりないというので、真衣という名前を体に入れていただいた。ステージが終わっても、まだやりたがる彼女の気持ちが嬉しいじゃないですか」 ――ここまでの話を聞いていると、イヤがっていても、結局はすべて受け入れてますね。 「そういうことなんです。針もあれ以来、つい最近までダメだったんですよ、恐くて。でも、やられたら平気だった。私の意識としては映画の中に出てきた奴隷ですから、嫌がっているのにむごいことをされるのが好きなんです。やって欲しいことをお願いしてやってもらうんじゃなくて。田亀源五郎さん(註2)の漫画は自分に近いと思います。本気で嫌がっているのに、ひどいことをされますよね」 ――でも、もう本気で嫌がっていることって、あんまり残されてないでしょ(笑)。 「いや、焼きごてはイヤです。イメージとしてダメですね」 ――だったらやってもらわなきゃ。 「それはまだダメです」 ――だから無理矢理やってもらわなきゃ(笑)。 「あとはお尻も苦手です。やったことはあるんだけど、バイブはとても入らない。それと、お尻は切れて、元通りにならないんじゃないかという恐怖がある」 ――やってもらわなきゃ(笑)。 「でも、それは……(と延々続く)」 ――もう今は鍵を閉めて、一人で家でやったりはしてないんですよね。 「いや、暇だから。ここ2年はSM以外何もしていない。週に一回くらいSMのお店に行って、家にいる時もビデオを観て。100円ショップで剣山を買ってきて、自分で押しつけても限界があるので、ガムテープで体に固定して寝て。血が滲むまでしますね」 時間をいっぱい与えられただけで、中学生の時とあまり変わらないみたい。 註1:ストリップ劇場でのSM調教ショーなどで活躍する女王様。東京・渋谷「東京ミラージュ」にも所属。 最終回に続く(「スナイパーEVE」vol.14より再録/2004年8月頃取材) |
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