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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

女性のための馬になりたい「馬之介」さんの巻 第1回
12.01 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回のゲストは、少年時代に見た西部劇に影響を受け、人間馬になることを夢見続けてきた「馬之介」さん。自作の拘束具などを披露してもらいながら、氏のSM人生について熱く語ったいただきました。

★馬になりたいという願望

東京・赤羽のビザールバー「サイテスワン」で会った馬之介さんは52歳(取材当時)、如何にも仕事のできそうなビジネスマンといったタイプである。
馬之介さんは、SMパーティやSMパブで、よく馬になって駆け回っている人である。

「昔から、僕の馬に対するイメージというのは全然変わっていないんですよね。小学校の頃、『アニーよ銃をとれ』というドラマをテレビでやっていて、西部劇ですから、主人公のアニー・オークレーが馬に乗って登場するのが楽しみでした。その当時から、ロープが好きで、馬になりたいという願望があったんですよ」

欧米では、「ポニーボーイ」「ヒューマンホース」と呼ばれ、一ジャンルとして確立されているが、日本では、こういう人は非常に珍しい。SMに限らず、海外の雑誌では、全裸の女が馬に乗っている写真がよく出ている。馬という存在が日常に浸透していて、エロと結びつきやすいアイコンとなっているのだろう。

「アメリカだけじゃなく、もともとSMはフランスの貴族の遊びとして始まっているから、上流階級の女性らが馬に乗ってキツネ狩りをする、といった伝統があるんだと思うんですよ。インターネットを見ると、海外には専門サイトが本当に多いんです」

馬之介さんの世代には、『アニーよ銃をとれ』を見ていた人が多いはずで、だからといって皆が皆、馬になりたいと願っていたわけもないから、この嗜好は世代的なものとは言い難い。

「セックスのこともまだ知らなかったんですけど、はっきりと性的に興奮してました。こういう趣味の人たちがいると知ったのは、ずっとあとのことですから、100パーセント、自分の中から出てきたものです。『なんで』と聞かれても、わからないとしか言えない」

――馬乗りをしている時に、背中に乗った女の子のお尻の感触がよかったとか(笑)。

「そういうことはないですね。体験によるものじゃないと思うんですよ」

第2回に続く(「スナイパーEVE」vol.2より再録/2001年8月頃取材)





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