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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

女性のための馬になりたい「馬之介」さんの巻 第2回
12.08 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回のゲストは、少年時代に見た西部劇に影響を受け、人間馬になることを夢見続けてきた「馬之介」さん。自作の拘束具などを披露してもらいながら、氏のSM人生について熱く語ったいただきました。

★長靴をはいた女性に興奮

馬之介さんが興奮していたのは『アニーよ銃をとれ』だけではない。

「僕は今で言うブーツフェチなんです。昭和20年代だと、まだブーツはなくて、長靴フェチだったんですね。小学校の給食の時に、給食のおばさんが白い長靴をはいていたんです。それを見て興奮していたこともあります」

――対象が先にあったんじゃなくて? 好きな女の子が長靴をはいているのを見るのが好きとか。

「じゃないですね。同級生が長靴をはいているところじゃなくて、もっとうんと大人の女の人がはいてるいところがよかった。雨の日になると、玄関のところに座って、長靴をはいた女性が歩いているのを見るのが好きだった。それももう性的な興奮を伴っていました」

情報があちこちから入ってくる今の時代ならともかくも、馬之介さんの世代で、小学校の時に既に長靴に興奮し、女性が馬に乗っているのを見て興奮していたというのは驚きである。人間というもの、どうやっても覆い隠せない天性のものがあるってことなのだろう。
SMを知ったのがまた早い。

「初めてSM雑誌を見たのが小学校3年の時。『風俗奇譚』が近所の林の中に捨ててあって、それを見て、『こういう世界ってあるんだな』って。自分の中に既にあった世界をそこに見たんです。沼正三さんの『家畜人ヤプー』みたいなことをよく妄想していたんです」

――『風俗奇譚』は文章まで読んで?

「読みましたよ。写真より文章がよかった。ルビがあったから、読めるんですよ」

初期の『風俗奇譚』では確かに難しい漢字にはルビがついているが、それ以外の漢字を小学生が読めたとも思えない。馬之介さんは、漢字を飛ばしながら読み、想像力でそれを補っていたため、すべて読めたように記憶しているのだろう。

「中学になってからは、恒常的に『風俗奇譚』を買うようになりました。『奇譚クラブ』や『裏窓』も買いましたけど、僕は『風俗奇譚』が一番好きでした」

――フェチも取り上げてましたよね。

「そうです。『風俗奇譚』はSMだけじゃなくて、レズやホモ、切腹など、マニア系を広く取り上げてました」

初期の『風俗奇譚』にもブーツ姿の海外の写真が掲載されているが、ここではまだ「長靴」と書かれている。

第3回に続く(「スナイパーEVE」vol.2より再録/2001年8月頃取材)





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