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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

レインコートの上から縛られたい「雨男」さんの巻 第2回
01.26 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回この連載にご登場願った「雨男」さんは、レインコートフェチ。正確に言うとレインコートを着た状態で、S女性に弄ばれたいという性癖の持ち主である。素肌にレインコートを羽織り、ボタンをぴったりと留め、今日も雨男さんは恍惚となる。

★生来からレインコートに執着

「たぶん私がレインコートを好きなのは生まれつきだと思うんです」

と彼は言うのだが、マスクで口を覆うこと自体は少なからぬ北国の子どもが好きな行為だと思う。というのも、彼と話しをしているうちに思い出したが、私もアノラックのマスクで口を覆うのは好きだった。自分の息の温かみとともに、狭いところに入る感覚と似ている快感があった。

それを今も快感と感じ、なおかつ口を覆う快楽がレインコートに執着するところに移行したことが彼の特異性なのだ。あの圧迫感を伴う安心感は、たぶん全頭マスクやさるぐつわといったものには向かいやすいだろうが、レインコートとはつながりにくいのではなかろうか。

しかし、彼の場合は、いたってスムーズに移行を完了。アノラックは冬場しか楽しめないので、他の季節はレインコートである。

「小学校に入ると、雨の日は校門のところで女の子たちがレインコートを着て帰る姿をずっと見てました」

アノラックがおねえさんのものだったためか、彼は最初から自分が着るのも、女の子が着ているのを見るのも好きだったんである。

そして、やがてはレインコートが本道となる。もっとアノラックを着る期間の長いアラスカやアイスランドに生まれていたら、きっとアノラックフェチになっていたことだろう。

第3回に続く(「スナイパーEVE」vol.7より再録/2002年11月頃取材)





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