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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

金蹴りに魅せられた「玉男」さんの巻 第4回
08.25 14:30更新

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取材・文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回のゲスト「玉男」さんは、女性に股間を蹴り上げられることにこの上ない悦びを感じるM男性。気絶する一歩手前の痛み、男性なら誰でも経験しているであろうあの鈍痛を、自らの快楽に昇華させている氏に、「金蹴り」の肝を伺った。

★なぜ気持ちいいのか自分でもわからない

玉男さんの話を聞いて、正直なところ、私はいつになく当惑した。当惑しつつ、いつになく好奇心を刺激された。

玉男さんも言うように、精神性を強調してくれる多くのM男さんだと話は早い。どんな行為でも「信頼」「関係性」といったキーワードで回収できてしまうからだ。「どんなに痛くても、この人のためなら耐えられる」ということで解釈することができるのに、玉男さんは全然そういう話をしてくれない。しかも、金蹴りである。それだけで多くの男の理解を超えてしまう。

――今さら言うのもナニだけど、キンタマを蹴られるとムチャクチャ痛いじゃないですか(笑)。考えるだけでもウッてなる。キンタマを蹴られるくらいだったら、人前でウンコした方がいいなあ(笑)。

「なんで気持ちいいのか自分でもわからないので、他人には理解できないでしょうね。僕にとっても蹴られることはやはり怖いんですよ。実際、どんなふうに蹴られているのか自分ではよくわからないんですけど、真っ直ぐ立っているつもりでも、腰が逃げているかもしれないですね。望んでやっていても、防衛本能が働くんでしょうね」

望ましい痛みと恐怖、望ましくない痛みと恐怖の境界線が今ひとつよくわからない。

「僕だって怖いんですよ。格闘技経験のある女性の方がいいんだけど、『格闘技をやってました』って言われると怖いです。潰れない程度のところで抑えてもらわないと」

――キンタマを潰されたい願望はないんだ。

「妄想としてはあります。それとか、どこまでやったら潰れるかとか、潰れたらどうなるかって好奇心もあります。でも、そんなことになったら、また病院に行かなきゃならない(笑)。だから、僕じゃない誰かのキンタマが潰れるところは見てみたい(笑)」

玉男さんは結婚していて、子供もいる。今さらタマがなくなったところで、そうは困るまい。

「だけど、僕はタマを蹴られるのが好きなんだから、タマが潰れたら、蹴ってもらえなくなるじゃないですか」

それもそうだ。玉男さんはセックスも普通に嗜んでいる。キンタマを切除することになって、勃起しなくなったり、萎縮してしまっても困る。

――キンタマや精子に異常はない?

「子供ができた時はもう蹴られてましたけど、ちゃんと産まれましたから、大丈夫だったんでしょう。特にタマが大きくなったということもないですし。蹴られてすぐは腫れますよ。硬くなって熱をもちます。3日くらいは痛みも続きますけどね」

最終回に続く(「スナイパーEVE」vol.9より再録/2003年5月頃取材)





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