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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

金蹴りに魅せられた「玉男」さんの巻 最終回
09.01 14:30更新

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取材・文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回のゲスト「玉男」さんは、女性に股間を蹴り上げられることにこの上ない悦びを感じるM男性。気絶する一歩手前の痛み、男性なら誰でも経験しているであろうあの鈍痛を、自らの快楽に昇華させている氏に、「金蹴り」の肝を伺った。

★蹴られるたびに怒張するペニス

私が金蹴りマニアに会ったのはこれが初めてなのだが、日本に数十人という程度のマイノリティではないらしい。

「SMクラブで聞くと、たいてい『こんな人に会ったのは初めて』って言われますけど、SMバーで同類の人に会ったことがあります。その人はネットもやっていて、海外でも多いらしいんですよ。英語では「ball busting」と呼ぶこともその人から教えてもらいました」

「bust」は破裂させるとか、強打するという意味。

「その人と出会うまでは、自分以外の同類の人がいることを確認できてなかったので、雑誌を見ては、金蹴りについて出てないか探したりしてましたね。数は少ないですけど、SM雑誌の小説で、金蹴りをメインにしたものをいくつかは見つけましたし、今はビデオも何本か出てますよ」

日本全国に少なくとも数百人という単位では仲間がいるのだろう。

さて、このあと玉男さんが数十発の蹴りを股間で受けるのを目の前で見せてもらうことになった。本当に苦しそうで、見ているこちらが耐えられなくなりそうだった。なのに、アゲハ女王(註1)と夜宵女王(註2)ときたら、鋭いキックを炸裂させながら、実に楽しそうである。これ自体、理解できない。たぶんキンタマの痛みを経験したことのない女性だからできるのだろう。

そして玉男さんのペニスは大きく怒張していた。蹴られる直前に大きくなって、蹴られてしばらくすると小さくなる。まさにその行為が勃起を促すのである。

「月花さんに匹敵するくらい彼女たちの蹴りはよかった。力が入っていたので、お尻側に入るのも多かったんですけど、角度はピッタリでしたね」

たっぷり蹴られたあとで、そう語る玉男さんのキンタマは赤く腫れていたのであった。見るだけで痛い。行為は単純だが、私にとってはとても理解するのが難しい人であった。

註1:かつて東京・中野にあったSMクラブ「ピクシー」に所属していた女王様。
註2:同じく「ピクシー」に所属していた女王様。

この項終了(「スナイパーEVE」vol.9より再録/2003年5月頃取材)





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