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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

レインコートの上から縛られたい「雨男」さんの巻 第5回
02.16 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回この連載にご登場願った「雨男」さんは、レインコートフェチ。正確に言うとレインコートを着た状態で、S女性に弄ばれたいという性癖の持ち主である。素肌にレインコートを羽織り、ボタンをぴったりと留め、今日も雨男さんは恍惚となる。

★SM雑誌で性癖を確認

彼のこの性癖は、SMともつながっているのだが、こちらの目覚めも早い。

「テレビで、子どもが誘拐されて、さるぐつわをされて監禁されるようなシーンがあるじゃないですか。それを見て興奮してました。小学校に入る前からです。自分もあんな目に遭ってみたいって(笑)。たぶんアノラックのマスクがさるぐつわにつながったんですよ。だから、ほとんど同時期ですね」

これも中学くらいになると、はっきり性的なものとして自覚していて、早くもSM雑誌を買うようになっていた。

「最初に買ったのは『S&Mスナイパー』だったかな。その頃、友だちとエロ本屋に行ったんですよ。おばあちゃんがやっているような本屋さんで、いっぱいエロ本が売っていて、友だちは普通のエロ本を見ていて、私はSM雑誌を手にして、『僕はこういうのが好きなんだ』って言ったら退かれましたね。当時はまだ自分がSだと思っていたんですよ。今考えると、縛られてさるぐつわをはめられている女の子に自分を重ねていたんでしょうけど、自分がMだとはまだ自覚できてませんでした」

そんな自分に対する不安は今もあるというのだが、そうそう人に言えるようなものじゃなく、特にレインコートについては、SM雑誌を見たところでめったに出ていない。

「だから、古本屋で『奇譚クラブ』とか古いSM雑誌も買うようになったんです。昔の方がまだレインコートの話が出ている」

昭和三十年くらいだと、レインコートではなく「合羽」だったりするんだが。

「ビデオでも、たまーにレインコートが出てくるものがあるので、そういうものも集めました」

第6回に続く(「スナイパーEVE」vol.7より再録/2002年11月頃取材)





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