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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

レインコートの上から縛られたい「雨男」さんの巻 第8回
03.09 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回この連載にご登場願った「雨男」さんは、レインコートフェチ。正確に言うとレインコートを着た状態で、S女性に弄ばれたいという性癖の持ち主である。素肌にレインコートを羽織り、ボタンをぴったりと留め、今日も雨男さんは恍惚となる。

★めくるめく妄想ワールド

「女社長に呼ばれては罵倒されるようなのがいいんだ」と私が言ったら、彼の妄想にスイッチが入ってしまった。

「そうです、そうです。社長室に呼ばれて叱られるんですよ。『この役立たず』って怒鳴られて、悔しくてしょうがないんだけど、チンポが立っているんですよ(笑)。社長がそれを見て、『私に怒られているのに、なんでチンポ立っているの』ってまた怒られて蹴りを入れられるんです。床に倒れたところを縛られて、『あんたみたいなウスノロに仕事は任せられないから、今日からこの子たちの奴隷になりなさい』って言われて、そこに新入社員のOL二人が入ってくるんです。昼間、お茶くみをさせていた新人にそんなところを見られて、もう僕は恥ずかしいし、情けないし。だってひどいじゃないですか。僕は社長のことが大好きなのに、ずっと年下の新人の奴隷ですよ。『このクズを好きに使っていいわよ』なんて言われて切ないです。なのに股間が膨らんでしまうんです。今も話しているだけで膨らんだんですけど(爆笑)」

で、この女社長は若手の女社長を集めて「女社長の会」を開いている。毎月、第一金曜日の夜は、社長室に会員の女社長たちが集まってパーティをやっている。ある金曜日、朝から雨男を机の下に縛って転がしておいたことをすっかり忘れた女社長だったが、「ウーウー」といううなり声が聞こえてきて、ようやく雨男の存在を思い出した。机の下から引っ張り出して、皆にこう言う。
「ねえ、誰かこいつを引き取ってくれない? もういらなくなっちゃったのよ」

第9回に続く(「スナイパーEVE」vol.7より再録/2002年11月頃取材)





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