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0302当世マゾヒスト列伝

マゾヒストとして生きる道を選択した男たちの物語 M男性におくる珠玉の電脳活字ワールド

レインコートの上から縛られたい「雨男」さんの巻 第9回
03.16 14:30更新

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文●松沢呉一
Text by Matsuzawa Kureichi

人間10人いれば、その風貌も性格も10通りあるように、一口にM男性といってもそのSM観、M嗜好は千差万別。マゾヒストとしてそれぞれが様々な思いを持ち、SMプレイにその人生の一部(あるいは全部?)を捧げている。
今回この連載にご登場願った「雨男」さんは、レインコートフェチ。正確に言うとレインコートを着た状態で、S女性に弄ばれたいという性癖の持ち主である。素肌にレインコートを羽織り、ボタンをぴったりと留め、今日も雨男さんは恍惚となる。

★さらに続く果てしなき妄想

彼の妄想を引き継いでこんな話を私がしたばっかりに雨男さんの興奮はいよいよ高まった。

「そういうカンジ、そういうカンジ。切ないですよね、それ。『こんなのもういらない』ってセリフがむゃくちゃ切ないです」

女社長がそう言ったら、興味を示したのがいた。「女社長の会」でもっとも若い三十二歳の美貌の女性である。彼女は女社長に「で、いくらで譲ってくれるの?」と聞く。女社長は「五百円でどうかしら」と言って、ヒールの先を頬に押しつけるのだった。

「ああ、切ない。五百円ですか。でも、『こんなのが五百円なんて高いわね』って言われて、大好きな女社長が『じゃあ、十円よ、十円』って。たったの十円ですよ、僕は(笑)。でも、誰も引き取ってくれなくて、最後は『お金をつけるからもっていって』なんて言われてしまうんです」

もったいないから金はつけないだろ。

女社長たちはそれぞれ自慢の奴隷をつれてきていて、その中で屈辱を味わう雨男だった。

「いや、それはダメです。僕は男が嫌いですから。日常生活ではいいんですけど、プレイでは男は絶対にいて欲しくない。だからSMパーティとか興味ないです。『女社長の会』でも、男は僕一人です」

どうせ妄想なんだから、そのくらいいいじゃないかと思うんだが、こういうところは決して譲らない雨男さんである。

すでに酒が入っていたせいもあるのだが、この話をしている時の彼はものすごく饒舌だった。

最終回に続く(「スナイパーEVE」vol.7より再録/2002年11月頃取材)





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