文=鈴木られこ
「高身長のせいで、普段回ってくるのはSな役柄ばかり。でも本当は私......」という女優星崎アンリとその訴えに立ち上がった鬼才TOHJIRO監督とのディープな120分強。
作品は、ROUND ONEとなる「TJ的密室調教」、ROUND TWO「拘束椅子体液プレイ」、そしてROUND THREE「ハードイラマチオ&ガチンコSEX」の三部から構成されている。
再生するとすぐにアップで映し出される鳥籠型の黒いペンダントライト、そして赤いカーテン。そこから切り替わり、すでに部屋の真ん中には、下着姿で手足を拘束されて目隠し、さらにボールギャクを噛まされて立つアンリが居る。
観ている側が直ぐには状況が把握出来ない、小説の書き出しのような描写が芸術的な雰囲気だ。
彼女は正面に現われた監督らしき男性の仕込んだリモコンローターに身を捩じらせているようだが、彼はスイッチを入れたり切ったりして彼女を玩んでいる。
この男性は「いけっ!」「よーし!」と中尾彬のようなバリトンボイスで合いの手を入れる感じで女優を乗せていくのだが、命令口調でも威すときでも貶すときでも余裕と包容力が感じられるので、女優さんが攻められてるのもいい意味で安心して観ていられる感じがする。
拘束具を解かれ、スパンキングやアナルを弄られながらのM字開脚でのオナニーシーン。
アンリは感じながらも泣き出してしまう。
「嬉しいのか?」「嫌じゃないのか?」と聞かれてポジティブな回答をするのだが、個人的には彼女がすでに完全にプレイに溺れているというよりは、通過儀礼を経て相手に身を任せ、自分をさらけ出す腹をくくったような瞬間に見えた。
さらに、両乳首に付けられた洗濯ばさみの紐を自分の口に咥えたまま、スパンキングやアナルへの指入れをされつつ自分のマンコを擦らされるアンリ。
また、電マを渡され夢中になって使いイキかけたかと思えば突然喉の奥まで指を突っ込まれてえずいたり、すぐさま再びバイブを突っ込まれていたりと、一見荒唐無稽で畳み掛けるような責めに観ている側も混乱してくる。
しかしそんなカオスの中、「イキたいぃ」「イっていいですか?」とアンリの意思はうわ言のような言葉からもはっきり浮き彫りになって来る。そんな彼女の状態から、その責め方が的確なものだったのだと気づいて感服してしまった。
それでもまだイカせてもらえぬまま、自分のマンコに入っていたバイブを舐めさせられると複雑な面持ちになってみたりと、素直な反応が子供のようだ。
たび重なる寸止めの後、よがり狂いながら懇願してイカせてもらうアンリ。白目をむき気味で何を言ってるか解らないことを叫びつつ涙目のアヘ顔でイク様子には、三次元離れしている絵面と裏腹にとてもリアルな幼女系オンナとしての魅力があった。
一部の最後、監督に自分の気持ちを訴えながら開放され切ったように泣いてるアンリに放たれる「お前、痴女じゃなくてドMだろ」という監督の台詞が、責めではなく患者を肯定してあげるカウンセラーの声のように聞こえるのが印象的だ。
ROUND TWOに移り、目隠しをされ縄で手を上に、足をM字開脚の状態で拘束椅子に縛られたアンリが性器にホイップクリームを載せて仰向けに寝ている。
監督とアンリが、ROUND ONEで泣き出した理由についてなどの会話を始めるが、画面のハードさに対して、アンリは目隠しをされて縛り付けられた人間とは思えないリラックスムードになっている。二人の間には、すでになんらかの信頼関係が生まれているのだろうか。
そして、カメラがアップで映し出すのはアナル。意外なところに注目を浴びてアンリは素で恥ずかしがりつつアナルをヒクヒクさせ、マンコのホイップクリームを熱と愛液で溶かしつつ感じている。
しかし唐突に「今日ウンコした?」と聞かれ、答えていくうちに「おっきいの出たの?」「10センチくらい」「じゃあ何本?」「2.5本くらい」と答え、スタッフから失笑を買ってしまい恥じらいながら言い訳をしたりしている。やはり妙に和気藹々としている。
しかし監督とは別の責め手の男性が現われて腋をいやらしく触り始めると、「2.5本」の空気から5秒足らずでまたエロいスイッチが入るところがすごい。そもそもまだオフになっていなかったのか。
腋を攻められておしっこが我慢できなくなり、放屁しながら止まらない勢いの放尿も。さらに全身にローションを垂らされ、腋や柔らかそうな乳房や足だけへの攻めでイキかける。
そしてクンニからの手マンで、色々と出過ぎ混ざりすぎですでに正体の分からない大量の汁を出しながら絶叫してイッてしまう。責め男優がアナルから指を抜くと中指になんとこんもりとウンコが。
「恥ずかしい、恥ずかしい」って、これは普通に恥ずかしいだろう。
さらにY字型バイブでもう一度強烈に何かを吹き上げながらイキ、加えて極太ディルドと電マでイかされる。
たくさんの作品に出ている女優さんだけに、どれだけ感じても、いや感じているそぶりが大きい程にこちらの気持ちは「ダウト」にも振れる。
しかしROUND TWOのプレイが終わった直後「3年もやってて、こんな気持ちになったことないんだろ?」と言われ、「ずっと苛められるのをやりたいって思ってて......」と、照れながら涙を流したり笑ったりする様子はとても演技には思えない。
監督も言っているが、この辺で彼女は本当に子供みたいな顔になってて可愛いらしい。
もともと可愛い顔立ちではあるが、開放されきったような、または憑き物が落ちたみたいな顔付きになっているのだ。
ROUND THREE。男優のペニスをブリーフの上から擦りつつ、目はもうとろんとしてすでに何処かへ行ってしまっているかのようだ。
立ってる男性の目を見ながらフェラを始める。「いつも回ってくるのはSの役ばかり」とのことだったが、「それだって決して無駄じゃなかっただろう」と思わせる、相手の様子をよく見ての強く纏わり付きそうなフェラを披露している。
しかし、程なくして結局イラマチオで責められる側に。いくらむせ返っても止まらないそれは、ペニスのサイズとアンリの横顔のサイズ感から言って完全に喉の奥に突き刺さっていると思われ、ちょっと怖いくらいだ。
アンリの目から涙が、口から胃液が流れ出していることからも肉体的にキツイのは察せられるが、嫌々な気分でやってないのもまた十分伝わってくる。
キスをしながら股間をまさぐり合ったり乳首を責め合ったり、クンニやフェラ、手マンをしての挿入という、一周してごくノーマルなプレイに戻りつつ、アンリの感じ方は依然深いまま、いやそれどころか咆哮という程の声を上げるくらいになっているのが興味深い。
ハードなプレイは、それ自体が目的ではなく、精神のたがを外すための道具なり途中経過だったのだろうか。
ラスト10分ほど、TOHJIRO監督とアンリがこの日の撮影を総括して語り合うのだが、アンリは色々な気持ちがあふれだしてまたもや泣き出してしまう。これも決して悲しそうな涙ではなく、シンプルに表現できない複雑な表情ではあるが幸せそうと言っても差し支えないものだろう。
序盤の終わりに、アンリに演技を忘れて感じることを約束させたとき、「今日はいっぱい責めてやるから、(カメラの前で)正直なお前見せろ」と言った監督と、それに子供のように頷いていたアンリ。
当たり前であるが、これは全てがプライベートではなく作品作りを前提とした行為なのだと思い出させる場面であった。
そう思うと「面倒を見続けることは出来ない女の子を、ここまで剥き出しにしちゃって、後は大丈夫なのかなあ」と複雑な気持ちにもなった作品だった。
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