文=安田理央
一時は絶滅の危機に瀕しているのではと心配されたAVのドラマ物ですが、最近少しずつ復活の兆しが見えてきました。それも、以前のような「本当は映画とか撮りたいんだけど、AVでも似たようなこと出来ないかなぁ」というような制作者の独りよがり的なドラマではなく、ちゃんとエロとして機能しているようなドラマが増えているのが嬉しいところです。
本作も、そのシチュエーションを丹念に描くことによって、情緒のあるエロを堪能させてくれます。
舞台はバブル前夜の昭和60年。時代から取り残されたようなボロボロのアパート。上京して10年たつのにまだ訛りが抜けず、パッとしないセールスマンが主人公。彼のたったひとつの楽しみは、AV鑑賞。もちろんまだVHSです。ある時、主人公はお気に入りのAVに出演している女を見かけます。そして、後をつけて住んでいるアパートを発見し、その隣室に引っ越します。
押入れに入り、薄い壁越しに隣室の物音に聞き耳を立てる主人公。女の部屋には、週に何日か粗暴な男が訪れます。
「お前はおれに金で買われた女なんだぞ」
そういってその男は女をサディスティックに犯します。その様子を盗み聞きする主人公。
ちょっとしたきっかけで、主人公と女は言葉を交わすようになります。出身地が同じで、お互いに訛りが取れないことを知り、やがて二人は愛しあうようになります。
ところが、その関係が男に知られて……。
洗練とは無縁の、貧乏くさいリアリズム劇。その切なさが、無味無臭の凡百のAVとは違った生々しいセックスを彩ります。
主演の管野しずかも素晴らしい。23歳とは思えない壮絶な崩れた色気と、女の哀しさを感じさせる名演。その肉体も、実にリアリティがあります。アナルまで開発されているというのが、その哀しさに拍車をかけていて、グッと来ますね。
ピンク映画のベテラン、岡輝男が脚本を手がけているとのことで、さすがと唸らされました。
ここ数年、見せることに重点を置くショーアップされた「カラミ」ばかりが幅を聞かせてきたAVシーンなのですが、最近はどうやらリアリティのある「セックス」が注目されて来ているような気がします。
本作のようなコクのあるドラマ作品がもっと増えてくると、また面白くなってくるのではないかと思いますね。
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