監督： ヘンリー塚本
発売日：2011年02月25日
品番：FAX-327
収録時間：135分
定価： 3500円
メーカー：FAプロ

文＝遠藤遊佐　

死ぬほど気持ちいい一瞬があるからこそ、老若男女問わず人はセックスに夢中になる――。
生きて味わうこの世の天国、すなわち「イクイクイク〜ッ！」の瞬間を集めた直球勝負のオムニバス。
とはいえ、FAプロの作品ですからもちろんただのカラミを集めただけじゃありません。本作は2時間強に短い話をぎっしり詰め込んだ盛りだくさんな構成。1話ごとの時間が短いぶん、ドラマよりも濡れ場に重きをおいたつくりになってるんですが、どれもしっかり手がこんでいます。

まず1話目「夫の兄貴と、あ〜、だめだめイッちゃう〜！」は、傷害事件を起こして指名手配中の兄が逮捕される前に人妻となった妹のところに最後の一発をヤリにくる話（タイトルでは義理の兄ってなってるものの、内容は実兄っぽいニュアンスなのがよりいやらしい）。
「ヤラせてくれ、頼む」と頼まれ「まったく、どうしようもない男……！」と言いつつも、そそくさと風呂場にアソコを洗いに行く妹。

普通ならここでそのままベッドになだれ込むところなんでしょうが、あえてそうしないのがヘンリーワールドなんですよね。妹は熟れた尻をプリプリさせながら急いでアソコを洗い、部屋で待っている兄はブリーフの股間をギンギンにさせながらもご近所さんに見られないよう開けっ放しの窓やカーテンを閉めたりする。
セックス自体はハードなプレイもなく至って普通なのに、このワンクッションがあることでカラミが断然リアルに、卑猥になるわけです。
「どうしようもない男！」と毒づいていた妹が、いざハメられると別人のように可愛らしい声で喘いでしまうところや、イッた後男によりそいながらも尻は激しいセックスの余韻でヒクついてるところなんかも、「ああ、あるある！」って感じでリアル。

続く2話目は、妻が出産で入院している間に義母に夜這いをかける夫を描いた「婿に抱かれて義母があ〜、死ぬ、死んじゃう〜」。
婿役はFA作品の常連・花岡じった。余計なセリフは吐かず、ひたすら「お義母さん……お義母さん……！」と繰り返しながら腰を振りまくる姿なんかは“この世の天国”に抗えない男女の業を感じさせます。

その他にも、久々に会った義理の父親と彼氏（なぜかどっちもニッカボッカ姿の作業員）に立て続けにヤラれて、イヤヨイヤヨと言いながらもしっかりイキまくる「義理のおやじと彼氏にヤラれてあ〜あ〜あ〜」や、数分という短さながら方言での会話が妙にグッとくくる「刑事にヤラれてあ〜あ〜あ〜」など、全部で14本。
前にも書いたけれど、普通のAVならカットされるはずの男女がチンコを立てて（もしくはマンコをしとどに濡らして）部屋を移動したり、終わったあとさっさとティッシュで股間を拭いたりというシーンがしっかり盛り込まれているのはヘンリー塚本ならでは。この滑稽さと貪欲さこそがリアリズムでありエロなんでしょうね。

しかし、いつものことながらヘンリー塚本作品には、義弟とか義理のオヤジとか犯罪者とか、ワケありの相手とのまぐわいが多いですね。
これはやっぱり、この世の天国を味わうには背徳心が必要不可欠ってことなんでしょうか。凡人としては複雑な心境であります……。