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▼ 大肛門狂時代 お尻の穴のお勉強【113】

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文=横田猛雄
絵=伊集院貴子


淋病患者のテスティスこと英語の竹野先生。櫻井病院の院長先生と婦長さんに日頃の行ないが悪いからだと、たっぷり脂をしぼられています。おまけに若い看護婦さんたちに実習と称して、よってたかって精液も大量にしぼりとられます。


【しごき】

病院で検査のために、テスティスが強制的に精液を採集され、それも松田さんを始めとして五人いる見習い看護婦の人達の実習の材料にされて、繰り返し繰り返し絞り取られているのが手に取るようによく聞こえてきます。
私達は毎日学校が終わると、石塚さんの曾祖母の部屋に詰めかけ、耳を澄ましたものです。
テスティスが診察室に入ると、先ず櫻井先生の、

「こら、このどたわけめ、昨夜は銭湯へ行ったりしやせんだやろうなあ?」

と言う胴間声の問いかけがあって、テスティスが、

「横暴やわこんなん、おらちゃんと金払うて病気治してもらいに来とるだけやのに、何でこんなえらい目に逢わされんならんのやろ、チンボの毛まで全部剃られて、臍から太股までべっとり赤チン塗りたくられて、後ろは両方の尻たぶへ、猿みたいに真ん丸に赤う塗られてもて、格好が悪うて銭湯へなぞ行ける筈ありませんやんか」

と抗議しています。


「ひと月やふた月銭湯へ行けいでも、それはお前がどたわけなことしたから罰が当たったんじゃ、おのれのは普通の淋病と違うぞ、並のもんなら抗生物質一本できれいに治るのに、こんなもん国際淋病の一番性質の悪いやつやがや、横須賀や佐世保では、アメ公が持ち込んで来て、流行り出しとるということやが、三重県では、こんな不名誉なもん、初めてやぞ」

と言う櫻井先生に、婦長さんが、

「院長先生、こいつそのうえ内証で自分で治そうとして、水銀軟膏やとかタムシチンキやとかムトウハップ塗ったりして、ええ加減なことして日がたってますで、散々こじれてしもうて、昨日問い詰めましたところ、大阪でパンパン買うて、うつされたみたいですに……」

と報告しています。
すると櫻井先生が、

「たわけのすることはどうせそんなことや、こいつは包茎やで一発で病気もらうわさ、こら阿呆よ、おのれは菌が脳や眼球へ廻っとったら今頃はえらいことになっとんたんやぞ、何が横暴や、何が人権蹂躙や、ソ連は人類の理想郷やから、早うソ連に征服してもらわなあかん、ソ連の属国になるのが日本の理想や、アメ公出て行け、共産主義万歳やとか、今まででも散々たわけたことぬかしてけつかって、これで、脳が侵されたら一体何さらすか、危ないとこやったんやぞ、こっちが真剣に治療してやっとるのに、何ぬかすのや、まだ足らんのか!」

と言ったと思ったら、いきなりビュウと風を切る音がして、ビシーッと響き渡りました。
ほら始まった。
櫻井式の精神教育です。

「誰ぞ……、誰ぞ来とくなされ、今人が一人殺されかけてますのや、何の罪も無い唯の一市民が……」

テスティスが絶叫するのを横手から婦長さんが、

「何やてえ、人聞きの悪い、殺されるて何やそれ、こっちは病気と一緒にお前のそのたわけた根性を叩き直したると言うとるんやんかあ、有難いと拝んでもろて当たり前やのに!」

と叱っています。
昨日まではバシッバシッと幅の広い音がしていましたか、今日はビュウーと一際鋭い音がして、

「こらええわ、革砥では息が切れてまうが、このホースなら片手で使えるし……、この餓鬼め、ケツから煙が出るまで叩き伸ばしてもたろ」

と、どうやら水道のゴムホースで叩きのめされているようで、テスティスの大袈裟な絶叫が連発されています。
文学的表現をもってすれば、こんなのを『阿鼻叫喚の巷と化す』と言うのでしょう。
(続く)


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