文=横田猛雄
絵=伊集院貴子
【お尻の花電車】
仕事を早目に終えた私は、まだ夕方には間のある浅草は国際通りをぶらぶら歩いてみた。友人達の話では、そこはポン引きたちの出没する所で、何かと面白いアバンチュールに満ちた場所として有名で、その時の私は無性に何か刺戟を求めたかったのです。
地下鉄の田原町から国際劇場を指してぶらぶら歩いてゆくと、一人のポン引き氏がいつの間にか並んで歩くようにしながら、「社長、お尻の花電車いかがですか?」とさそいを掛けてきました。
ひやかし半分に聞くと、女は若い娘で、花電車は見るだけで女の子に手を触れてはいけないとのこと。彼に連れられて行ったのは、吉原(今千束と言う地名でトルコ街となっている)の、娼家として同じような造りの並ぶその中の一軒で、ボン引き氏はその家の女将に小声で何か告げると、私の肩を叩き「では社長ごゆっくり」、と言ってまた表に出て行きました。
女将に案内されて廊下を渡り、奥まった座敷に入ると、そこは明々と電灯が点り、座敷の中央には浴衣を肩から羽織った若い女性がこちらを振り返り、軽く会釈をすると、ニッコリとして立ち上がり、浴衣をのけるとその下は一糸まとわぬ全裸で、女性は細身ながらよく発達したお尻を私の方に向けて差し出したのです。
すると和服姿の、それもほとんど同年輩の若い女将は、シガレットを一本取り出すとロに喰わえ、火の点いたシガレットを、巧みな手付きで女の肛門に差し挾んだのです。
そうして女将かニッコリと笑い「どうぞごゆっくり……」と出てゆくと、全裸の女はお尻をかかげて頭を低くし、尻をゆさゆさと動かし始めたのです。
お尻の双丘がひくつく度に真紅な火がパッと燃え、お尻をひねる度に白い煙がボーッポーッと吐き出され、実に巧みにその裸女は一本の煙草をお尻の穴で喫って見せたのです。
次に出してきたのは洗面器一杯のビー玉で、四つん這いになった彼女は、私にそれを一つ一つ、お尻の穴から入れてくれとせがむのです。洗面器に入った水で濡れたビー玉は一つまた一つと面白いように、丁度乳飲児がミルクを飲むようにビー玉の一つ一つを喰わえて、キュッと絞まって飲み込み、とうとう洗面器には一個も残らず、およそ丼一杯分くらいが彼女のお尻の中に消えたのです。
彼女が身をひねり腹をへこませると、彼女の中ではビー玉同士がこすれ合うギジッギシッというガラス音がはっきり聞こえ、次の瞬間、彼女のお尻の穴がキスする時のように盛り上がって開いたかと思ったらボコンと一つ飛び出し、続いて夕立のようにダダダターと洗面器の中に元のようにすべてが吐き出されたのです。玉を吐き出す彼女のお尻の穴は、あたかもスモモを食べて種を吐き出す乙女の唇のようにピンク色をしてヌメヌメして、それだけでズボンの前がムズムズと脹れてきて、尿が出そうで出ない、一種甘美なイライラ感のあるものでした。
次に彼女が取り出したのは三個のピンポン玉で、それは白と赤と青に染めてありました。その三個を飲み込んだ彼女は、「何色から出しましょうか?」と言い、実に私の指名通りに産み出して見せるのです。何度やってみてもまちがいないのです。
次は玉子です。三個を一時にお尻の穴に飲み込んだ彼女は、私の方にお尻を差し出して「エイ」と一声、ポンと玉子を私の鼻先に飛ばしてよこし、「よく見てて、狙うから……」と言って次の一個でビー玉遊びのように初めの玉子を狙い打ちして当て、また次の一個で当てて見せたのです。
次に出てきたのは硯と太筆、それに白紙です。筆の軸には脱脂綿が巻かれてやや末太にしてあり、それにコンドームを着せると、彼女は中腰に尻を突き出し、その軸をロにくわえて唾液で湿りをくれると、手を背後に廻し、私によく見えるように肛門に当てると、切腹するように一気にそれを自分の直腸深く突き立て、そのまましゃがんで白紙をまたぐと、腰を微妙にひねり、ハッハッと息を区切りながら、一気に草書体の達筆で、「お尻の花電車」と書き上げたのです。
その後も女は、フランス女そこのけのお尻の穴の珍芸秘芸を見せてくれたのですが、それらをすべて見終わって帰る夜更の私の財布の中身は空気よりも軽くなっていました……。
(続く)
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