文=横田猛雄
絵=伊集院貴子
【検便会場】
「十二時や、行くぞ」
と父に言われて母とその後を付いて行くと、大通りに出ると後ろの方から新聞のお姉さんが来るのが見えました。
お姉さんが「猛ちゃん」と呼んだものですから私は振り返り、お姉さんと一緒に歩くため少し待ちました。
「猛ちゃん、検便てあんたマッチ箱へウンコちょっと入れて持って行くあれしか知らんやろ? 今日のはそんなんと違う凄いに、お姉ちゃんの友達に看護婦さんがおるでよう知っとるけど、伝染病の時は男の人も女の人もみんな直接採便て言うてお尻の穴から直接採取しやれるんや、あんたの好きなやり方やなあ……」
と小さい声で言いました。
公民館の角まで来ると、西念寺の三重大生のお姉さんが、涙を流しながら出てきて、母に、
「あんまりや、あんなん、強制的にお尻の穴からガラス棒突込んで調べるんやもん、あんなの人権蹂躙やわ!」
と興奮して真っ赤になって言いました。
母は、
「ええ、何やて、ほんまかそれ? 嫌やわお父さん、帰ろうに」
と顔を曇らせ、父に、
「馬鹿者、法律で決まっとるのに何言うとるのや、調べてもろうて病気にかかっとらんことが判らなあかんやないかあ、生命がかかっとんのやぞ!」
と怒鳴られ、しゅんとして父に付いて行きました。
その時には何人かの人が寄ってきていましたので、皆が
「何や、そんなケツの穴へガラスの棒突込まれるのやて、えらいこっちゃなあ……」
と皆が興奮し、お姉さんは背後から私の耳に、
「猛ちゃん、楽しみやなあ」
と言いながら指で私のお尻の溝をチョンと突きました。
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