文=横田猛雄
絵=伊集院貴子
【それ突けやれ突け】
年寄りの話によりますと戦前(明治大正時代)はそれつけやれつけという凄い見世物があったそうです。
それはどんな物かと言いますと、
「黄金の臼に銀の杵、つきますお餅は十三・七つ、お月様にもあげましょう、ペッタンペッタンそれつけやれつけ……」
と兎の餅つきの唱歌に合わせて若い女の人が客席に向かって大股開きに腰巻きをまくっていて、観客の中で特別料金を支払った人に棒の先に綿の入った絹のタンポの付いたのが渡され、歌の終わらぬうちにそれで女性の局部を突いて、見事に夕ンポが挿さったら賞金がもらえるとのことで、観客全員が、
「それ突けやれ突け……」
と手を打ってその歌を斉唱し、女の人は器用に腰をひねって滅多に挿入させるようなヘマはしないそうで、これが有名なそれ突けやれ突けなのです。
ストリップ・ヌードショウは敗戦による米軍の進駐によってアメリカからもたらされた文化だとは言いますか、何の、彼と我とは文化の質が違う、建国以来二百余年の若僧が何を小癩な片腹痛い、三千年の歴史を誇る我が国には、岩戸開きの昔からそんなのはちゃんとあったのだ(今のイレポン・ショウは往時のリバイバル)。
私の中学時代も、デン助一座は、「それ突け」の出し物こそ無いか、昔から毎年こうやって来ていた伝統を誇る一座たったのです。
あのデン助みたいになってしまったら大変です、自分の物が邪魔で走れなくなるし、そうなったらもう学校に来ることも出来なくなるし、そう言ってチンチンを切り取ってしまっては死ぬだろうし、何としたらええのでしょう?
「横田、かわいそうやけとあんなのになったらもうデン助の弟子になって見世物の芸人一座に入って日本中廻らな生きて行かれせんよ……、あんたそれでええのか?」
と言う落合先生に私は「先生そんなん嫌やお願いや、助けてえ、何でも言うとおりします」とすがり付きました。
先生はあの厚い本の中から清朝の女性の纏足の写真を示し、
「これ見い昔の支那では女の人の足を小さくするために足をきつう包帯で絞めたからこんなに小さうなって、しわだらけで気持ち悪い足になってしもうて、君のチンチンかて包帯で絞めて小さくならんか知らと思うやろけど、血管の多い所をそんなに絞めたら血が止まって腐ってしまうであかへんから、処置無しや、そやけどまだ病気やて決まった訳や無いんやから、この事は誰にも言うたらあかんよ、先生の言うことをよう聞いておったら、心配せいでもええようにきっと守ったげるさかいに、なっ……」
と言われました。
(続く)
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