『姉と女装とエロ漫画家(富士美出版)』
著者=幾夜大黒堂
レビュアー=田口こくまろ
境界線で揺れる姉弟妹の愛欲を縦軸に、女アシ・エロ漫画家たちとの交遊を横軸に展開する長編エロ漫画家サクセスストーリー。連載時から大幅加筆修正した完全版!!
本作は主人公の売れないエロ漫画家が、美人編集者や熱狂的なファンといった痴女達に次々と犯されていくという、よくあるハーレムものの構造を採用している。
痴女ものの中には、女性主導で話が進むのは導入部だけで、最後は攻めにまわった男のテクニックで女の方がヒィヒィとイかされてしまうというものも多いのだが、本作は(一部例外もあるが)徹頭徹尾女性主導だ。エロいお姉さんが気の小さい主人公をひたすら性的にイジメ(可愛がり)倒す、M男にとってはたまらない内容になっている。
とはいえ、それだけならよくある話だ。本作の特異なところは主人公が常に女装しており、作画上の見た目は完全にかわいい女の子であるという点だ。
つまり、実際には痴女が男を責めている話であるにも関わらず、ビジュアル的には女性が女性を責めるという構造になっているのだ。タチが女、ネコが男(女装)のレズものと言い換えてもよい。
特に物語後半、主人公が男性器を股の後ろに引っ張りこんでテープで止めてしまう、いわゆるコツカケを行なった状態でのカラみ描写がすごい。コツカケ後の男性器はビジュアル的には完全にパイパン状態の女性器となっており、その状態で女性アシスタント(一人称は僕)にマングリ(チングリ)返しされ、数ミリだけはみ出した亀頭の先端をクリトリスに見立てて責められるのだ。さらに、貝会わせの状態で性器同士をこすりつけた後、女性がディルドーを装着して主人公のアナルを貫くという、完全なる男女逆転セックスが行なわれるのである。
このように、いささかひねくれた構造になっているので、万人にはおすすめしがたいが、男のヨがるすがたなど見たくないという嫌男主義者や、女装願望・女性化願望があるが、性的対象は男性ではなく女性のままでいたいという、考えてみれば自分勝手な願望を持つ人にはジャストではまると思う。
また、特殊なエロ描写が目立つため、うっかり見逃してしまいそうになるが、本作は熱血漫画家成長譚としても秀逸だ。
ヒロイン(実の姉)の愛を勝ち取るために、何度も挫折しそうになりながら、一人前の漫画家になろうともがき苦しむ主人公の姿は、「まんが道」や「BAKUMAN」でも描かれた王道ストーリーだ。
多くの女性に助けられ、本当に自分が描きたいものを見つけ、ベストのエロ漫画を書き上げるが、肝心の恋の方は盛大に玉砕するというラストシーンは、ほろ苦くも感動的だ。
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