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▼ 欧州フェティッシュジャーナル 【21】パリでの田亀源五郎

文=アニエス・ジアール

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在仏カウンターカルチャー専門ジャーナリスト、アニエス・ジアール&フランシス・ドゥドブラー。親日家でもあるお2人が世界のフェティッシュ事情をお届けしています。今週の内容は……フランスで初めて行なわれた、ロマンティック&フェティッシュなナイトクルーズの様子です。


2009年4月30日木曜日、日本人アーティストの田亀源五郎がフランスでの3度目の展覧会のためにパリへやってきた。

一部のファンは彼の作品を買うためにわざわざ海外から訪れて、展覧会の前に持って帰ってしまった! 会場で作品のすべてが見られた訳ではなかったので、とても残念だった。でも嬉しいことに、(展覧会当日は)多くのとても美しい作品が会場に残っていて、ヴェルニサージュ(一般公開前の特別内覧会)には50人も参加した。

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田亀源五郎は、西欧諸国で大変人気がある。こちらでは、彼の作風は浮世絵の系譜だととらえられている。たくさんのゲイや(アマチュアの)SM愛好家は、インスピレーションを求めて田亀源五郎のハードコアな漫画を買う。彼らは、超ハードコアと極端なロマンティシズムが混ざり合っている部分が大好きなのだ。

田亀源五郎のインスピレーションが自らの生い立ちからきているのかどうかは分からない(武家の家系に育ったため、厳しい教育を受けた)。彼は、幼い頃に規律というものを学んだ。だから本来は左利きなのに、書いたり箸を使うのは右手なのだ。また自分の全てを捧げる犠牲という美徳も学んだ。

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1986年以降、田亀源五郎は禁欲が主題の物語を描き始める。田亀源五郎の描く主人公たちは、ほんのわずかな貴族的なマゾヒズムを秘めつつも辱められ、虐待され、押さえつけられ、汚されることに身を任せる。最も猥褻な場面でも、この主人公たちが失うのは尊厳であって、命ではない。宿舎をあてがわれ、そこで主人公たちは情け容赦なく強姦され、そしてむせび泣くのだ。それでも、主人公たちのペニスは「気をつけ」したまま。だからこそ、素晴らしいのだ。普通の人では魅力をなくすような包帯姿の男性の優雅なことといったら!

田亀源五郎は、ギリシア彫刻の半神やアメリカのスーパーヒーローのエロティックなデッサンをするときにものすごく興奮すると断言している。けれど、彼は自分が月岡芳年の影響をかなり受けていることは否定しない。

もっとも、パリにあるギャラリー「アート」で行なわれている展覧会は『七人の侍』というタイトルがつけられているけれど。今回は18世紀の浮世絵(木版画)用の顔料で描かれた絵が出品されている。

日本で、私たちは田亀源五郎を理解するヒントを得た。おそらく、日本人特有の文化に起因しているのだろう。馴染みのない環境に適応する技術。日本人は火山性の国に住んでいる。だから、物事が不安定であることに慣れている。失うこと、苦しみ、孤独を昇華させる方法を知っている。壊れずにいられるのだ。私は、西欧諸国が田亀源五郎が好きなのは、作品から楽観的なメッセージを受け取るからだと思っている。私たちが日本を好きなのは、彼らが行列の最後にされたり、不安定なままで「勝利を収める」やりかたを知っているからだと思っている。

それが、私たちが日本の文化に惹きつけられてやまない大きな理由なのだ。

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左/アートギャラリー「ArtMenParis」のオーナーOLIVIER CERRI氏。
右/ギャラリーのアシスタント。ともに田亀氏のお気に入り作品を前に。

※原画にモザイクは入っていません。




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