文=アニエス・ジアール
在仏カウンターカルチャー専門ジャーナリスト、アニエス・ジアール&フランシス・ドゥドブラー。親日家でもあるお2人が、世界のフェティッシュ事情をお届けします。今回は大仕事を終えたアニエスのようやくのヴァカンスが……でも遠くパリにいるフランシスとのセックスはどうするのでしょうか……というお話。
今年の夏、私は自分の本(『エロティック・イマジネーション in ジャパン』※1)のレイアウトを終えた。
ようやくのお休みだ!
7カ月間、私は朝の9時から、早朝の3時まで働き詰めだった。
もちろん、横になる時は愛を交わしたりSMをすることができなかった。
そういう訳で、ブルターニュの海辺に到着したとき、私はついにヴァカンスを取ることができたのだ(※2)。
ちょっとした性欲と、フランシス(ドゥドブラー)と出会う機会を逃したヴァカンス。
問題は、私がブルターニュで、フランシスがパリにいるということ。
どうやってするのか、ですって?
iChat(アイチャット※3)よ。
毎晩webカメラをつけて、PCにログインした。
そして、求めに応じて、猥褻なことをする売春婦の真似事をしたのだった。
フランシスは、一人の客のように振る舞った。
「オッパイを見せろ。四つん這いになれ。下着の上から、自分で触るんだ……」
私のママが隣の部屋で眠っているときは、文字で会話をした。
私は、キーボードに一言二言書くのに、いつもマスターベーションを中断しなければならなかった。
それでもすごく価値のあることだった。
ずっと、性的サービスをするためにお金で買われるという空想に耽っていた。
西側諸国では、キリスト教のせいで性をお金でまぎらわせるということはとても悪い事だとみなされている。
多くのフランス人が、「ピュア」でいるためにセックスはタダでなければならないと考えているのだ。
私たちの文化では、お金は汚く、不潔で、愛とは正反対ということになっている。
もしかしたら、ユダがキリストをたった数枚の銀貨のために売った(※4)からだろうか?
日本では、パンを売ることと性を売ることの間には何の差別もない。
自分の仕事に誇りをもつパン屋がいる。
彼等は、パンが好きだからパンを作る。巧みに作る。愛を込めて作る。
それは、パンを売る事の何の妨げにもならない。
だから、どうして性を売ることを恥じる必要があるのだろう?
写真では、私がストリッパーのようにしているのが見て取れるでしょう。
私は、この衣装をブリュッセルのアダルトショップで購入した。
下品になることに、とても意味があった。そうでしょう?
<訳者註>
※1:『エロティック・イマジネーション in ジャパン』……2009年に河出書房新社より発売予定。
※2:ヴァカンス、ブルターニュの海辺……フランス人にとって、夏に長い休みをとって、自分の住む町から離れるという事は一種のステータスで、「ちゃんとした人」であることの証しである。また、ヴァカンスを海辺で過ごす事は、お約束のようなありふれた、ごく一般的な過ごし方である。
※3:iChat……PCのマッキントッシュに付属している通話ソフト。インスタントメッセンジャーのようなもの。音声、ビデオ画像、文字入力でのやり取りが可能。
※4:ユダがキリストを数枚の銀貨で売った……聖書に「(十二使徒の)イスカリオテのユダはキリストを銀貨30枚でローマへ売った(裏切った)」という記述がある。日本語版では「銀貨30枚」とあるが、正式には「セステルティウム」という通貨で、「ドニエ」という通貨の4分の1に相当する銀貨を指している。つまり、殆ど価値のない通貨何枚かで裏切ったということになる。
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