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▼ 欧州フェティッシュジャーナル 【9】ヴィクター・サンチェス

文=アニエス・ジアール

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在仏カウンターカルチャー専門ジャーナリスト、アニエス・ジアール&フランシス・ドゥドブラー。親日家でもあるお2人が、世界のフェティッシュ事情をお届けします。2007年、バルセロナにて、日本のエロティックアート展のオーガナイズをしたアニエス。そこで出会ったベルギー人画家、ヴィクター・サンチェスを紹介します。


しばらく前、バルセロナにあるアートギャラリーが私に日本のエロティシズムに関わる展示をオーガナイズできるかどうか訊ねてきた。オファーを引き受けて、アーティストをギャラリーに紹介した。9人は日本人、2人はフランス人で、1人はスイス人だった。4人目の日本人ではないアーティスト(ベルギー人)、ヴィクター・サンチェスは決まってからすぐにそのギャラリーの展示会に加わった。

私はその選択に少々驚いていた。というのも、ヴィクターのスタイルが全然気に入ってなくて、しかも日本についてのレポートも大してなかったからだった。

ヴィクター・サンチェスは、写実的でアカデミックな裸体を、従順な熟年の老化の兆しを見せ始めた身体の絵画を描いている。豊満な腰、垂れた胸、浮き出た骨、皺の寄りだした顔。

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2008年10月27日、ブリュッセルへ行き、フェティッシュ・アセンブリー(フェティッシュな集い)というパーティの会場で、ヴィクター・サンチェスが古くからのフランスの友人であると判って、とても驚いた。その上、ヴィクターは私に会う為に、妻とプレスの人間(ミュリエル)と一緒に特別に来たのだという……。

「君の為に特別に絵を描くよ」と、ヴィクターは私に贈り物をくれながら囁いた。私は少し戸惑ってしまった。なぜって、ヴィクターの絵に見る全ての女性は、連れ合いに似ているのだ。その晩のパーティで、ヴィクターの奥さんはラバーの衣装を着ていて、ヴィクターが妻のことを愛しているのだとわかった。彼女は少し太っているけれど、とても優しいので美しく見えた。

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ヴィクターもまた、太っている。全てのベルギー人がそうであるように、ビールのせいでお腹が出ている。だから、お腹を隠すために袴を着ている。ヴィクターと奥さんは「ゆったりと」SMを嗜んでいる。この世代のベルギー人は太っていて優しくて、横になって部屋の中で楽しむのが好きなのだ。この夫婦は、自分たちの子供が秘密を暴くことをひどく恐れている。けれども、いつかは自分たちの子供が同じパーティにいるだろうということはわかっている!

ヴィクターは何十年も昔に縛りの絵を私に見せてからずっと、自分が日本のエロティシズムをとても愛していると言ってきた。彼の縛りもまた、結び目を愛らしくするために「ゆったりと」している。縄が全く役に立たず、時代遅れでみっともない。

私? 私はいつだってヴィクターの絵は全然気に入らない。けれども、ヴィクター・サンチェスが社交界にかかわるのを見ているのは好きだ。ヴィクターは現実を描き、それが気に入っている。しかし現実を、より美しくしようとはしないのだ。

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