文・コルセット製作=PureOne(P.C.W)
モデル・スタイリング=阿妓-AGI-(HaZer)
写真=winchrome
男性のコルセット職人を「コルセティエ」と呼びます。フェティッシュ・アイテムとしてのコルセットにこだわらず、深い伝統と格式に裏づけられたコルセットを模索する新進気鋭のコルセティエ、「Pure One Corset Works」のPureOne氏。そんな彼が製作するコルセットを、写真とPureOne氏自ら語る制作秘話や解説などとともにご紹介するフォトギャラリー連載、前回に引き続きトライバルグラフィックデザイナー「阿妓-AGI-」さんの登場です。
【マシンと自分の間には、何か通じる心がある気がします】
行き詰まったり、疲れたりすると、散歩に出掛けます。行き先はだいたいどっちか。本屋か海か。
この前本屋さんでギター雑誌を立ち読みしていて、ロックバンド『THE BIRTHDAY』のヴォーカル、チバユウスケさんが、「一本のギターを長く使い続けると、自分の音しか出なくなる」と言っていました。それを読んで、なるほどなーと感心していました。よく車なんかだと、「長く乗り続けるとその人の運転の癖がつくから、中古車買う時には気をつけなさいよ!」なんて言いますが、同じことがギターにも言えるもんなんだなーと。
衣装屋も同じで、大切な商売道具である「ミシン」もその人の癖が思いきりつきます。以前、縫製工場で働いていた方で、その人が踏むミシンはどんなに使っても調子がいい!と言われる縫製のプロの方がいらっしゃいました。どんなに調子が悪くても、ドライバーでパパっと調整し、いつまでもミシンの調子がよいのです。何か不思議な力が働いている様な気がしました。
私が愛用しているミシンも、私の癖が思いきりついています。私が愛用しているミシンは、工業用の古いもので比較的オールマイティに縫える直線ミシンなのですが、オールマイティであるだけに極端に厚い生地に対してはなかなか対応してくれませんでした。針も普通の太さで特殊なものを使用していなかったので、酷い時など一着縫うのに7〜8本折りました。ミシンと針の関係が上手くいかないと、中の機械に傷が付くだけでなく、糸も切れやすくなってきます。そんなミシンでコルセットを作ることは、正直、格闘に近いものだと思います。もう心の中では「言うこと聞きやがれー」と罵声をミシンに浴びさせたい気持ちでした(笑)。だがこれがどういう訳か、枚数を重ねる内に、綺麗に縫えてくるのです。ミシンが太い糸や極太の針に対応してくる。特別モーターを変えた訳でもないのに、パワーが増えた気さえします。
マシンと自分の間には、何か通じる心がある気がします。物にも魂が宿っているというのでしょうか? そんな感じです。
縫製は、確かに技術ですし、指先の器用さが大事です。しかし、マシンを理解しているかどうかでも、実は大きく違います。縫製が苦手という人は、だいたいミシンを理解していない場合が多いのではないでしょうか。女性には機械が苦手と言う方も多いのですが、機械が強い衣装屋さんは、本当に強いです。ミシンの構造を知ると、布の扱い方が変わってきます。例えば、「布の押さえ方」「アタッチメントの選択の仕方」など、正確に縫う方法が分かってきます。
機械も人間も相手を理解するってのは、口では簡単ですが、なかなか難しいことです。昔、大学時代の友達が「人の気持ちが分からないヤツほど、心理学を勉強したがる」と言ってました。人ってのは、常にないものねだりの動物です。そう思えば、この理屈もあながち的を外してはいないように感じます。しかし、「相手を理解しよう!」と想う気持ちは、とても大事だと思います。心理学を勉強したからと言って、人の気持ちが分かるとは、思えません。機械だって、構造を理解したからって、ミシンと意思疎通は出来ません。本当の理解と言うのは、理屈を超えて、もっと感覚的で心で繋がることなのかな!?
私も、まだまだコルセットに対しても、ミシンに対しても理解が足りない様です……(苦笑)。
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