文=抱枕すあま
先週の話ですが、月曜日の午前中から大阪での打ち合わせがあったため、週末は名古屋の実家へ帰っていました。すると、ちょうど近所で大きなお祭りがあるというので、姉の子供である双子の姪っ子たちが遊びに来ていました。
実はですね、私はこの姪っ子たちに対して、秘密にしていることがあるのです。いや、秘密にされているという言い方が正しいかもしれません。それは何かというと、姪っ子たちには、私が母親の実の弟だということを秘密にされているのです。
この姪っ子たちのお兄ちゃんである小学5年生の甥っ子は、この事実を知らされた時、一週間ほど落ち込んだというのです。まぁ、甥っ子と話すときは、できるだけ高いところから見下ろし、目をそらして、ウソばっかり付いていたからなぁ……。最近では、すあま叔父さんの話になると、甥っ子は「すあまちゃんもなぁ。ふぅ……」とため息をつくらしいのです。11歳の小学生に心配される34歳って……。
そのため、姪っ子たちが小学校に入学して、世の中には頑張ってもどうにもならないこと、諦めなくてはならないこと、受け入れなくてはならないことが存在すると理解できるようになるまで、親戚一同からこのことは秘密にするように言われたのです。よくよく考えたら、ひどい言われようだなオレ。泣いちゃいそう……。
そんな訳で、私は、たまに遊びに来るお祖母ちゃんのお友達ということにされているのです。姪っ子たちからは、当然のごとく「叔父さま」とは呼ばれずに「すあまちゃん」と呼ばれています。
正直な話、私は独り暮らしが長いので、子供とどんな話をしたらいいのかが分からないのですよ。抱き枕となら、一晩中でもピロートークができるんですけどね。
姪A「すあまちゃん! 私の好きなお寿司知ってる?」
す「知ってるよ。マグロでしょ?」
姪A「ブッブゥ〜〜!! 全然ちがうよ!! 私がすきなお寿司は、鉄火巻きです!!」
す「……」
姪B「それじゃ、私の好きなお寿司は?」
す「今度は当てるよ! 確か、サーモンでしょ?」
姪B「ちが〜〜うっ!! 鮭だよ!!」
す「……」
これって、バカにされているのでしょうか? ここまでバカにされたのは、これまでの人生の中で、家族と親戚と友達と先生と会社の人と近所の人たちと野良犬くらいしかいませんでした。少なくとも、ソクラテスやプラトンなどの哲学者たちは、私のことをバカにしたりしませんでした。
でもですね、この日の私は、ちょっと違ったのです。姪っ子たちと仲良くなろうと、お土産を二つ用意してきたのです。前回のように、『笑点人形焼き』ではありません(『第16回お土産は人形焼き』参照)。まず一つ目は、ぼた餅や草餅などの和菓子です。お土産の箱を開けると、姪っ子たちは二人とも草餅が食べたいと言い出しました。しかし、残念ながら草餅は一つしか買ってきませんでした。私は「このままではケンカになってしまうのでは?」と思い、オロオロしていると、お祖母ちゃんがサッとやって来て、草餅を包丁でタテ半分に切り、二人にあげました。
「なかよく、半分ずっこだよ」
姪っ子たちは、二人並んで美味しそうに草餅を食べていました。
(続く)
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